2007年05月10日

■■ 運命の長崎帆船まつり!レポート by 筑豊のツル ■■

 4月27日出張先の佐世保市、とあるビジネスホテル。同期と
酌みかわした昨夜のアルコールに侵された潤んだ目で、地元の
新聞に目を落としながら、簡素な朝食をとっていた。
惰性でページをめくっていると「長崎帆船まつり・4月26日
(木)〜30(月)・長崎港」の記事が目に飛び込んできた。

 「ナニッ!」「オッ、ヤッタぜ!」
途端に、口に運んでいた沢あんの匂いと塩っ辛さが現実のものと
なった。五感と五官が正常に機能し始めたのだ。
 今日の仕事は、長崎市の某造船所を訪れること。仕事内容の
深さと濃さはともかく、訪問することに意味がある。しかも、約束の
時刻は午後3時半ときたもんだ。時間はたっぷりある。朝食もそこ
そこに高速バスに乗り込んだ。
 
 快適に疾走すること約1時間半で長崎に到着。街全体が霧で
包まれている。蒸し暑い。私の記憶にある国鉄の駅舎は三角屋
根の時代であったが、今はまったく昔の面影を残していない。
 駅前の客もまばらな食堂で、早めの昼食を済ます。行動を起こ
す前の腹ごしらえ」である。大藪春彦風に表現すると"ボロニヤ
ソーセージと茹でたアスパラを胃袋に放りこんだ"となるのだが、実
際にチマチマと胃に運んだのは皿うどんであった。
 
         *******
         
 駅前から正覚寺行きの長崎電気軌道車に乗る。むっと車内満
員の熱気が身体を包んだ。長袖の下着を着けてきたことに腹立た
しさを覚える。汗がにじんできた。着用二日目に突入するホワイト
カラーの首周りが、汗で汚れないか気になる。

 路面電車の窓にながれる街並みに、文明堂総本店の看板を見
つけた。「へーっ、ここが文明堂カステラの元締めか!」などとどうで
もいいようなことに感心していると、降車停留所の出島に着いた。
乗車時間、わずかに数分。欧米の子供たちの間では、ア・フュー
ミニーツと日常的に言われているらしい。

 軌道に沿って歩くこと2、3分、税関の建物を右に曲がった途端
霧にもやった海が開け、水辺の森公園の岸壁に幾本かの帆柱が
目に入ってきた。じわっと鳥肌がたつのを覚えた。言いようのない興奮だ。
 岸壁に近づくにつれて、帆船群の全容が視野一杯に広がった。
ボランティア活動中の人から手に入れたスタンプラリー用紙で、それぞれ
の船名がわかった。<コレアナ><飛帆(フェイファン)>
<あこがれ><観光丸><日本丸><海王丸><パラダ>の7隻。

この日が長崎出張でよかった・・・と神に感謝した」。同時に、頭の隅で
こんな声も聞いた。
 「帆船まつりに合わせて出張計画を立てたんじゃないの〜っ?」子供
たちのセイルトレーニング訓練でお世話になっている、クルーザー
<レッドシャーク?>のキャプテン正木である。ここまで追っかけてくる
かぁーっ!
 
         ********
         
 林立する帆柱に感動する。あれがミズン、あれがフォア、ジブが4枚
もある。上手まわしを効率よくするためか・・・。しかし下手まわしだと転
覆するよな、きっと、などと非才をもって眺めることしばし。と、腰に一本
差ししている携帯電話から「い〜ら〜かーのな〜み〜とー、く〜も〜
のなあみー」のメール着信音が現実の時を破った。ソルティドッグじゃな
かった、ソルティフレンズのQたろーからだ。写真を撮ってこいとの指令
である。

 その昔、正岡子規が横須賀に遊んだ時、
 「横須賀や 只 帆柱の冬木立ち」
の句を残している。錨を落としている明治海軍の艦船群をながめて
寒々とした横須賀港内の情景を詠んだのだろう。正岡さん!そしたら、
この情景をどう詠む?この貴婦人たちのドレスとガードルを支える帆柱
を冬木立ちと詠むかい?もっとも洗濯してなかったらそうかもしれない
けど・・・。

 だけど<日本丸><海王丸>はさすがに豪華帆船だ。その美しさ
に圧倒された。一方で、東京の越中島に保存されている鉄の帆船
<明治丸>があまりにも可愛そうで、不憫でならない。

         ********
         
 場内の拡声器が「13時から、<パラダ>の一斉展帆を行いまーす」
と案内している。Qたろーに「↑らしいよ」とメールした。
先ほどのQたろーからの指令は、正確にはこの時の返電である。こう
いう訂正の仕方に、海上自衛隊38年でつちかった几帳面さが出て
くる。早速、両舷前進強速でシャッタースポットへ移動する。

 すでに好位置と思われる芝生には、昨晩の夫婦喧嘩で家を
追い出されて行き場のない中年の男性、恋人に振られて自暴自
棄になってホットドッグをバカ」食いしている若い女性、それも口の
まわりはケチャップだらけ。
 「はんせんちゃ、何ね?棒がいっぱいたっとるばってん、どげんして
海ばはしると?」「おいにそげんこときいてもわかるもんか!」などと
思い思いの日本語を口走る幼い若いカップルが携帯カメラを構え
ている。後頭部に刺激を加えたほうが良さそうだ。
 
 時間になった。前檣、大檣、後檣ともにコース(?)から展帆し
始めた。へーっ、そういうものなのか。拡声器からは次々と「л#%
&$#▲◎*」の号令が流れている。なるほど。
 「そこの転桁索に人数を配れ!ミスタ・ボライソーそいつの名前を
控えろ!」というミスタ・スパーク二等海尉の罵声は聞こえな
かったような気がする。

 総展帆に十数分かかっていた。いずれの帆も風に立っている。
当たり前田のクラッカーだ。しかし万が一に備えてのことだろう。
大型のタグボートが、全後部で舫いを張っている。
<パラダ>の容姿を遠景で数枚撮った。霧がなければ鮮明に
撮れたのにな。少し残念である。
 
 背景の湾の入り口には、一昨年の12月に完成したばかりの
女神大橋が霞んで見える。これは良しとしても、すぐ後ろの某
造船所の大型クレーン、修理中の商戦群、歴史を刻み込んだ
ドックハウスやくすんで見える工場の屋根々々がせっかくの景観を
損ねている。長崎市に物申している訳ではありません。ただ純粋
な希望を口にしたまでです、市長さん。

 <パラダ>の近くまで足を運んだ。これまた凄い。感激だ。舷
門に当直士官、当直下士官、当番の水兵が立直している。舷門
にはどれも若い水兵さん達がハンドレールやブルワークに「もたれて」
誇らしげに我々見学人を見おろしている。日本海軍や海上自衛
隊の躾にはない光景だ。
 彼らはいずれも美肌で色が白い。思い込みの激しい私は、黒
パンの色素を忠実に体内に取り込んでいない証拠だ!きっとそうに
違いない!と一人合点した。
 
      ************
      
 <パラダ>を堪能した後、白の天幕が並ぶメイン会場へ戻った。
手にしているスタンプラリーが完成していない。残すは韓国から参
加している<コレアナ>である。湾に向かって一番の右奥に係留
している。遠い。汗をかきながら早足で向かった。またワイシャツの
首周りが気になったが、今はそのようなことに頓着している時ではない。
 
 目指した天幕の受付で<コレアナ>を最後とするスタンプを
押した。すると受付の中年のご婦人が「すごいですね、これで
終わりですね。向こうの本部でこれを見せたら、抽選で景品を
もらえますよ」と云わっしゃるけん、景品?もしかしたら帆船の模型
やなかろうか?それも両手に持ちきれんほどのデカイやつやなかろうか。
と、またまた勝手に思い込んでしまった。

 この時、首周りの汗に関する件は全く頭になかった。描くは帆船
の模型である。通りぬける公園のなかにはうどん、焼きそば、焼き
鳥、何とかソーセージなどの旗をたてた出店が並んでいる。「帰り
にうどんでも食べるか!」などと、およそ今の状況に相応しくない
ことを頭に描いている自分が理解できない。
 
 本部の天幕で明るく叫んだ。「すみませーん、スタンプラリーが
終わりましたーっ」この瞬間、模型はもらった!と思った。しかし天幕
内にいる職員の反応が薄い。
 すばやく幕舎内を見渡した。テーブルの上に抽選箱みたいな物は
ない。暮れの晦日の商店街で目にする三角くじの排他」入ったや
つだ。それに一等賞、二等賞という張り紙をした豪華な景品らしき
物も見当たらないではないか。
 
 ウン?ちょっとおかしいぞ、と思っているうちにボランティアらしきおじ
さんが「もう終わりんしゃったとですか、はやかですねーっ。ハイ、お疲れ
さまでしたー」と差し出したのは小さなお菓子。よく見ると某製薬会社、
大豆の栄養食品「ソイジョイ」と書いてある。絶句。呆然。
 すると、そのおじさん「はーい、次の方こちらへどうぞ」だと。目まいが
した。首周りの汗でにじんだYシャツのことが今またよみがえり、同時に
<コレアナ>の受付にいた品の良い中年のおばさんの顔が、怒りと
ともに目に浮かんだ。ニトログリセリンを口から注いで揺さぶってやり
たい(笑)。
 
 しかしすぐに、景品にこだわる浅ましく卑しい自分をそこに見た時、
怒りが羞恥に変わった。私はだいたいが感情の起伏の激しい、単純で
思い込みの激しいオッチョコチョイなのですよ。
 
      *************
      
 そんなこんなで時計を見ると3時に近い。某造船所へ一緒に行く
ことになっている技術屋さんと長崎駅で待ち合わせているのだ。
 <日本丸><海王丸><あこがれ>とは、来月に浦賀で会う
ことを心で誓いながら、急いで水辺の森公園を後にした。
トツートツート。
            
posted by SaltyFriends通信 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。