2007年02月10日

◆ 「明治丸ヒストリー」【11】☆最終回☆ ByQたろー ◆

先月の第10回で「ヒストリー」は一通りおさらいしました。
最終回の今月は、保存という観点からあらためて<明治丸>を見て
みたいと思います。

《原因はメンテナンス?それとも…》

昭和63(1988)年に完了した復元工事が済んだ直後は、パリ
パリのピカピカだった<明治丸>ですが、関係者のレポートによる
と、復元工事から3年後(!)の平成3(1991)年にすでに雨
漏りの補修工事が始まり、平成9(1997)年にはメインマスト
のヤード(帆桁)の取替え工事が行なわれています。

このことは復元工事終了後、ほんの数年であちこちが痛みはじめ、
あっという間に手がつけれられない状態にまで破損が進んでしまっ
たということを意味しています。
原因としては、第一にメンテナンスの不足ということも考えられま
すが、それ以前にたった数年でそこまで傷みが進行してしまった、
イコール、修復工事の内容が十分かつ適切なものではなかった、と
考えざるを得ません。

yard, masthead.jpg
折れたヤード(帆桁)、マストヘッド


数多くの重要文化財の中でも、船舶としては第1号となった<明治
丸>。復元工事時は、文化庁にまだ十分なノウハウがなかったのか
もしれませんが、近い将来予定されている修復工事では、ぜひ
そのあたりを踏まえて事前に十分な調査を行い、遺漏のない工事を
行っていただきたいものです。
なんてったって、修復にかかる費用は私達国民の払っている血税
で賄われているんですもんね!


《これからの保存船》

ご存知のように<明治丸>は、喫水線の少し下部より地中に埋めら
れており、水に浮かんでいるわけではありません。
最近この地面に埋まっている船底の一部が腐食して大人の指が入る
ほどの穴があき、特に雨のあとなど地下水がホールド(船倉)内に
噴出するようになってきています。

Meijimaru hold 2.jpg Meijimaru hold.jpg
<明治丸>のホールド(船倉) 右/雨が降っていない時でも
              つねに滲みだしている地下水


イギリスの海事研究家で、海事遺産コンサルタントのジョン・
ロビンソン氏も警告しているように、日本の保存船<雲鷹丸><三
笠><明治丸>のような「陸上コンクリート固定方式」は、熱膨張
や風圧、地震などによる船体の微動によって、周囲のコンクリート
に亀裂が生じ、そこから雨水や汚染物質が侵入。それらは船側近く
の地中に閉じ込められ、船殻にジワジワとダメージを与えます。

Mikasa.jpg popa de Mikasa.jpg
<三笠>の周囲のコンクリートにも亀裂が・・・


一見、海水に接していない分、劣化のスピードは速くないように見
えますが、その実コンクリートで船体を固めてしまうと、船体外面
の腐食を検査することがほぼ不可能になってしまうんですよね。
<明治丸>の場合も、地中に埋まっている部分が相当「ヤバい」状
態になっているのかもしれません。

お持ちの方もいらっしゃると思いますが、昔「東京商船大学」時代
に制作されたB5版サイズの「重要文化財 明治丸」という資料に
「(前略)とくに船底部についてはなるべく早い機会に掘り起こし
外舷を現すドライドック方式に改めることが望ましく、またそれが
可能なように既に船台方式の工事が施されている(後略)」とあり
ます。

恐らく19年前の復元工事時は、船台までは付けたものの、予算の
関係でドライドックにできなかったのでしょう。
今回の文化庁の補修工事でその工事が予定されているかは不明です
が、前述の船体にあいた穴のことを考えても、早急になんらかの対
策を考えなければならないと思います。

Meijimaru popa.jpg


日本は「海運国」ではあっても「海洋国」にあらず。歴史的船舶の
保存などでは、まだまだ後進国です。
時間はかかるかもしれませんが、私達Salty Friendsの活動が少し
でも一般の方の船や海に対する関心を高めることにつながれば、そし
てそれが貴重な産業遺産の保存につながれば…。もしかしたら
<明治丸>がドライドックに鎮座する日が来るかもしれません。

「明治丸ヒストリー」は今回をもって終了いたします。
長い間お付き合いいただきまして、有難うございました!
posted by SaltyFriends通信 at 02:49| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 日本の保存船問題は、本当に淋しいです。
Cutty Sarkの火事は他人ごとではありません。
船体を再製しドライドック式にして実現される事を祈ります。費用大変ですが・・・
名古屋港の(ふじ)は水に浮かせていますが、
腐食問題を真剣に考えているのか、判りません。
Posted by  海のトリビア   森 隆信 at 2007年06月07日 23:56
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