2012年06月24日

□■ 南十字星の下、三色旗ひるがえし    南米帆船レース Velas Sudamerica2010 参加レポート その4 By Qたろー ■□

◆練習帆船、トレイニーの生活◆


初日最初の当直は、いきなり「ゼローヨン」。ゼローヨンとは、つまり
真夜中の12時から朝の4時まで、船の運航を航海士と一緒に担当する
ということだ。良からぬことを考える者が跋扈する時間帯?ということ
で「泥棒ワッチ」ともいう。

ゼローヨンに続いて、当直は四時間ごとにヨンーパチ、ハチーゼロと続
く。ちなみに一番キツイ(と思うかどうかは各自の考え方次第だが)ゼ
ローヨンの「泥棒ワッチ」に対して「殿様ワッチ」は、ハチーゼロ。朝
8時から正午まで。朝メシ食って昼まで働き、ランチしてさぁ休憩。ラ
クチン〜♪という訳である。

ご存知のように船は、帆船に限らず、24時間常に誰かがついて見ていな
くてはならない。たとえ沖でアンカリングしている時でも、潮の流れや
強い風などのせいで、錨を海底で引きずりながら動いてしまったり(走
錨という)あるいは他の船や大きな漂流物がぶつかって来ないとも限ら
ないからだ。

もちろん、船の進路を決めたり、セイルの展・畳帆の判断は船長や航海
士が担うのだが、海軍や商船系の学校以外の組織に所属する練習帆船で
一般人が乗船可能な船のトレイニーは、それ以外のこと、つまり学校
などで習うような特別なスキルがなくてもできることを交替で担当する。

例えば
ルックアウト:船首部での見はり
ヘルム:舵とり
ビルジチェック:一定時間ごとに船底のあか水の量をしらべる

などなど。その他、レーダーのチェック(不審な船が接近してこないか、
船が走錨していないか)、風向、水温のチェックなどもトレイニーの仕
事だ。異常があれば、即、オフィサーに伝えねばならない。

もちろん必要とあれば、荒天だろうが夜中だろうが、マストに登ってセ
イルと格闘したり、ロープを引いたりしなければならない。さらに緊急
時人手が必要な場合、夜中でも「All hands on deck」(総員呼集『全員
デッキへ』)のお呼びがかかれば、非番の者たちも全員出ていって作業
にあたる。このとき寝コケていて作業に加わらなかったりすると、後で
みんなから白い目で見られるので、要注意(笑)。

さらに欧米の船によっては、明け方に当たったワッチが朝食のパンや
おやつのクッキーなどを焼くこともある。とくに大型帆船では、パン焼
き専用の厨房まであったりして、お米の国、日本との違いを実感。

ついでに船内の掃除や、ペンキ塗り、サビ落とし、真鍮みがきなどの
メンテナンスは、たいがい手が空いている者全員で行う。当たり前だが
海では潮水&潮風で、金属部分はあっという間に錆びるので、文字通り
ペンキ塗りは年がら年中していなければいけない仕事の一つだ。
頻度と作業量は、船長、ボースン(甲板長)のマメさ加減と、船の資金
力によるかも?

船によっては、船内の掃除の時間帯を「ハッピーアワー」と呼ぶが、
これはロフト作業(マストに登って行う展・畳帆などの高所作業)から
開放され「ハッピー♪」ということ。…ロフト作業の方が好きな私には、
ハッピーでも何でもないんですけど;;
そういえば居酒屋などでのハッピーアワーは、飲物などの値段が安く
なるタイムサービスのことだが、もともとの語源は航海用語。アメリカ
海軍で娯楽時間のことをこう呼んでいたのが由来らしい。


◆まっさらな気持ちで◆

ヘルムの取り方やレーダーの見方などは、一見難しそうに思えるかもし
れないが、もちろんクルーやワッチリーダーなどがその都度教えてくれ
るので、知識や経験がなくてもぜんぜん大丈夫!むしろ、他の船でやっ
たことがあるから、と自己流で判断する方が危険かもしれない。

もちろん基本的なことは大差ないが、同じ作業でもその船にはその船の
「お作法」があり、もっと言えば、船長・艦長によっても、やり方やタ
イミングが異なったりする。

何度か練習帆船に乗ったことがある人も、初めての船に乗ったときは
自分のノウハウはひとまず脇に置き、まっさらな気持ちで教わる方がい
いかもしれない。意外と「お☆こっちの方が合理的!」なんていう、
新たな発見があったりする。


◆船ごはん◆

さて、バルパライソ出港後、陽もとっぷり暮れた19時。<エウロパ>で
とる初の食事だ。ギャレー(厨房)は下の中甲板、キャビンの並びにあ
り、大きいメスルーム(食堂)は上。つまり上甲板のハウスの中。
クルー、トレイニーとも、取り分けてもらった自分のお皿を持って、よ
ろめきながらラッタル(階段)を登る。

船の中では登る人が優先なので、お皿を持つ人が上がってきたら、降り
る人はしばし上で待機しなければならない。そうそう!階段の横の壁に
ついている手すり。この持ち方、特に下りる時の手の向きが、陸と船で
は違うのだった。

上る時は一緒だが、下りる時の手の向きは逆。つまり、指先が上を向く
ように手すりを持つ。これは万一、ラッタルを下りている最中に船が大
きく揺れ、バランスを崩して真っ逆さま!ということになった場合でも
手首を骨折などしないように、という船乗りの知恵だと、むかし先輩か
ら教わった。
下りながら指先を上に向けるなんて、そんな器用なコトできんわい#と
最初は思ったが、腕を少し体の後ろに持ってくるようにすると、楽に手
すりが持てる。そして降りやすい!やっぱり昔からの習慣って合理的だ
なぁ、と感心したものだ。


さて、船での食事について。
練習帆船では、たいがいの船が乗船申し込み時、健康状態について申告
することになっているが、中でもアレルギーや持病の有る無しに関する
特記事項は重要だ。海外の船では、宗教上の理由で食べられないものが
あったら、それも申告せねばならない。たかがご飯と言えども、意外と
一言で片付けられないポイントだ。

私の場合は、もともと子どものころアトピーが酷く、動物性たんぱく質
を控えなければならない生活が長かったことに端を発しているのか、
普段から肉類はあまり積極的に食べない。ということで、今回は「ベジ
タリアン」ということにしてみた。(ブルガリアの<カリアクラ>に
乗った時申告しなかったら、ほぼ毎日肉が出てきて涙したので・・・し
かしそれしかない時は食べます!)

正直言って、何度かトランジットしたことのあるアムステルダム、スキ
ポール空港での食事がぱっとしなかったので、<エウロパ>ご飯も期待
はしていなかった。が あに図らんや、これがめっちゃ旨〜!***

今航海の司厨長は、キャプテンの奥様だった。クックスメイト(司厨長
のアシスタント)の女の子と二人で、一日三食プラス、午前と午後の
ティタイムのおやつを45人分賄っている。
オランダといえばニシンやチーズが有名だが、彼女のレパートリーは
大変広く、さすがに和食こそ出てこなかったものの、私が乗船していた
3週間、一度として同じ料理が供されることはなかった。これはすごい
ことだ。
そしてベジタリアンは私以外にも3人おり、とくに肩身の狭い思いをする
こともなく、じつに美味しい食事を毎日堪能する。おかげで3週間で、
なんと3キロも太ってしまった!(笑)

腕のいい司厨長と乗り合わせるか否かによって、航海の印象は大きく変
わる。司厨長は、1隻の船にずっと同じ司厨長が乗っている場合と、寄港
地ごと、あるいはログごとに変わるケースがあり、どんな人と一緒にな
るかは乗り組んでみないと分からない。当たりもあれば、当然ハズレも
ある。
運を天に、ではなく船に任せ「今回も美味しいものが食べられますよう
に」と祈りながら乗船するのもまた、航海の楽しみのひとつだろう。


次回はやっと!!献花の準備を始めます。(まぁ、気長にお付き合い
下さいね;;)
posted by SaltyFriends通信 at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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