2012年06月24日

□■ ロシア帆船Nadezhda<ナジェージダ>見学レポート By SFボラチーム ぐんそう ■□

ロシア帆船<ナジェージダ>特別見学会始末記 byぐんそう

去る2011年12月12日朝、横浜の表玄関である大桟橋に、ロシア練習帆船
<ナジェージダ>の白い船体が接岸しました。
桟橋の上には、ロシア語で「ようこそ」と書かれた横断幕。海風に煽ら
れるそれを捧げ持ったSalty Friendsメンバーの顔には、一様に「ようや
くこの日を迎えられた」という安堵の表情が浮かんでいました。
今回の<ナジェージダ>特別見学会開催に際して、Salty Friendsはかつ
てない困難に直面していたからです。

「帆船<ナジェージダ>横浜に来る」の報を、Salty Friendsは早くから
入手していました。この船はウラジオストックのロシア極東海洋大学に
所属する練習帆船で、同じウラジオストックの極東漁業技術大学に所属
する<パラダ>とは同型船です。
両船とも「長崎帆船まつり」の常連(2012年は<パラダ>が来航)なので
すが、横浜でお目にかかる機会は滅多にありません。
外国帆船の関東地方寄航がなかった2011年の最後に降って沸いたチャン
スに、Salty Friendsは喜び勇んで特別見学会の準備をしていました。

ところが・・・

当初、計画されていた一般公開は、突如中止になってしまいます。
もともと大桟橋はSOLAS条約(The International Convention for the
Safety of Life at Sea:『海上における人命の安全ための国際条約』)
規制が適用される岸壁であり、厳重な警備が必要です。
さらにこの時、米露間で外交問題が発生し、ロシアの動きに日本も神経
を尖らせていました。<ナジェージダ>も途中、アメリカの港に寄港で
きず、メキシコから45日間無寄航の航海をしてきたのです。

このような事情が重なった結果、港湾当局が警備に責任をもてないと判
断。一時は寄港そのものが難しいと言われた程で、一般公開どころの騒
ぎではなくなってしまいました。

象の鼻パークから撮影 ぐんそう.JPG 実習生講堂 ぐんそう (2).jpg
左:横浜大桟橋、像の花パークから見た<ナジェージダ>
右:実習生用の講堂


さて、ここからが大変です。2010年夏に来航した<サグレス>をはじめ、
幾多の外国帆船で特別見学会を行ってきたSalty Friendsですが、それま
では基本的に船側が主催する一般公開に便乗する形で行動していました。
(2007年チリの<エスメラルダ>来日時、一般公開はなかったものの、
船側の計らいで特別見学会を実施)。
一般人が入れない状態でなお特別見学会を開催するとなれば、外国船を
訪問するのに必要な手続きを、すべて自分たちで行わなければなりま
せん。

普通ならお手上げの状況ですが、ここで諦めないのがSalty Friendsです!
船舶代理店も横浜市も、港湾当局もいい顔をしないなか、粘り強く各方
面と交渉した結果、船側の人間とアポイントがあり、なおかつ税関で
「船陸交通」なるものを取得すれば、何とかなるという事がわかりまし
た。
そして12月12日、入港当日午後に特別見学会開催の運びとなり、一同
ほっとして<ナジェージダ>の入港を迎えた次第です。

Nade 1.jpg アムールトラが描かれた紋章 ぐんそう.JPG
左:横浜港の接岸場所、大桟橋に向かう<ナジェ>と
  横断幕で迎えたSFボラチームメンバー
右:ウラジオストックのシンボル、アムールトラの紋章


いよいよ待ちに待った船内見学です。まったくのイレギュラーな訪問者
である私たちSalty Friends一行を、<ナジェージダ>のクルーは暖かく
迎えてくれました。
案内をしてくれたのは、主席指導教官のエレーナさん。船側の担当者と
して今回の見学会実現のために尽力してくださった方です。

まずは船内をひとめぐり。実習生の講堂には、ウラジオストックの子供
達が描いたアムールトラの絵が飾ってありました。アムールトラはウラ
ジオストックの市章にもなっており、町をあげて保護活動に取り組んで
いるそうです。

Elena_Kazu.jpg 入港記念品 ぐんそう.JPG
左:見学会で案内して下さった、とってもチャーミングな
  主席指導教官のエレーナさんと通訳のカズー
右:大切にディスプレイされている入港記念品


大学の練習船だけあって、図書室や資料室も充実しています。色々と面
白そうな本もありましたが、流石に見ている時間はありませんでした・・・
残念!
資料エリアの壁には、かつてウラジオストックを訪れた著名な船舶の写
真や絵が飾ってありました。

乗組員の居住区は、見学会でも入れないことが多いのですが、今回は実
習生の部屋や教官室なども拝見。突然お邪魔してしまった実習生の
皆さん、それでも笑顔で迎えてくれて有難うございました!

階段室には<ナジェージダ>の模型と、今までに寄港した港の記念品が
飾ってあります。
この手の記念品は無造作に壁に飾っている船が多いのですが、ここでは
ガラス張りの向こうに展示されていて、ちょっとした博物館のような雰
囲気になっていました。

次は甲板上の見学です。この船は船首に大きなシア(舷弧・船体の反り)
があり、角型の船尾と相まって、今出来の練習船というよりも、ホーン
岬を回っていた往年のクリッパー船を彷彿とさせる古風な姿となってい
ます。
坂になった船首を登ってバウスプリットの根元で振り返ると、他の船で
はあまり味わえない、後部を見下ろすような眺めを楽しむことができま
した。

角型船尾(トランサムスターン) ぐんそう.JPG バウスプリット ぐんそう.JPG
左:<ナジェ>のクラシックな船尾
右:反り上がる船首、第一斜檣(バウスプリット)
  

甲板上には、夜のレセプションで訪船するゲスト達に紹介するためのも
のか、<ナジェージダ>の活動を紹介するたくさんの写真パネルや、
大きなマトリョーシカ等が飾ってありました。
私たちは十分に堪能しましたが、できればもっと多くの人に見てもらい
たかったものです。都合一時間半ほどの見学会を無事に終えて、船の皆
さんに感謝しつつ、この日は下船しました。


3日後の12月15日、<ナジェージダ>は横浜を出港する事になっていまし
た。Salty Friendsのメンバーも、見送りに駆けつけます。夕方6時の出
港という事で、「また会いましょう」と書かれた横断幕にイルミネー
ションを付けることになりました。出港2時間前に(!)材料を買いに行く
という有様でしたが、なんとか時間までに完成させることができ、みん
なひと安心!

正直、照明が良いとはいえない岸壁で、横断幕がどれだけフネから見え
るか心配だったのですが、どうやら<ナジェージダ>の皆さんの受けは
良かったらしく、出港前の忙しい最中にもかかわらず、たくさんの乗組
員が船上から写真を撮ってくれていました。

やがて<ナジェージダ>は岸壁を離れ、母港ウラジオストックに向けて
舵を切ります。また横浜で会える事を願いつつ、私たちは帆船が横浜港
の夜景に消えるまで見送りました。
一時は開催が危ぶまれた今回の特別見学会を実現させるために尽力して
くださった関係者の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

Nade ダズビダーニャ.jpg


実は今回の見学会の最中、船の広報担当の方がつきっきりで、私たちの
写真を撮っていました。
現代の練習帆船は、若き船乗りたちがシーマンシップを培う場であると
同時に、一般公開やレセプションを通じて寄航先の人々との交流を図り、
国際親善の礎となる「浮かぶ大使館」としての機能を、多かれ少なかれ
有しています。
一般公開で多くの見学者を迎えることは、帆船の士官や乗組員にとって
「任務」にほかなりません。

アメリカでは寄航もできず、日本での一般公開も叶わなかった
<ナジェージダ>にとっても、今回の特別見学会は干天の慈雨といった
ところだったのではないでしょうか。
Salty Friendsの活動が、船の側のお役にも立ったとすれば、実に喜ばし
いことです。

また、桟橋でお会いしたロシア大使館の方から、何度もお礼を言われた
ことも印象的でした。
帆船を通じた心の繋がりが日露友好の一助となる事を祈念しつつ、本レ
ポートを終えさせていただきます。

(レポート&写真:Salty Friendsボランティアチーム ぐんそう)
posted by SaltyFriends通信 at 09:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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