スペインの復元帆船<ビクトリア>の船大工、インドラさんの登場
です。
以前のメルマガでもお伝えしましたように、<ビクトリア>はこの
5月、世界一周をなし遂げて、1年半ぶりにスペインのセビリアに
帰港しました。
2004年のスペイン出港から、交代して降りていくクルーもいた
なか、ずっと<ビクトリア>と一緒に航海し、彼女の面倒をみてき
たインドラさん。その想い入れは、ハンパではありません。
===まずは<ビクトリア>とインドラさんのご紹介====
船名:Nao Victoria
建造:1518年(オリジナル)、1992年(復元船)
帆装形式:3本マスト キャラック(写真参照)
全長:25.9メートル
メインマスト(主檣)高:16.3メートル
人類で初めて地球一周の大航海を成し遂げた、ポルトガル人の
マジェラン(自身はフィリピンで死亡)率いる5隻の船隊の1隻。
最後に生き残った18人の乗組員と、唯一残った<ビクトリア>を
スペインまで指揮したのは、ファン・セバスティアン・デルカノ。

昨年、東京港に接岸する<ビクトリア>
お名前:インドラ・カスティージョ・サンチョ
職業:船大工、船員
スペイン、アンダルシア地方プエルト・デ・サンタ・マリア出身
専門は物理学で、船大工の仕事は現場で覚えたとのこと。「船大工
の仕事は世界で一番美しい仕事だ」とキッパリ断言する28歳。
子供の頃からの夢は・・・「海賊」!


大阪のドックにて。船底整備中のインドラさん(右下)
以下、インドラさんにお答えいただいた、一問一答です。
Salty Friends:【SF】 インドラさん:【Ind】
【SF】<ビクトリア>の何に一番誇りを感じていらっしゃい
ますか?
【Ind】「世界一周をなし遂げた彼女のメンテナンスや航海に
自分自身がたずさわったことに、とても誇りを持って
います。彼女はひどい嵐にも耐え、僕達クルーをいつも
見守ってくれました。本当にいい船です」
【SF】<ビクトリア>で記念日やお祭りがあったときの祝い方を
教えて下さい
【Ind】「航海中、仲間の誕生日などにはよくパーティをしていま
したね。たとえば仮装パーティ!みんな、ありあわせの
材料で変装するんです。特別なご馳走をつくりデザート
も用意して、大いに笑って過ごします」
【SF】航海中、色々あったと思いますが、特に記憶に残った
出来事(嬉しかったこと恐かったこと)はありますか?
【Ind】「楽しかったことは、数え切れないほど。でも特に残念
だったのは、船が港に着いても上陸する時間がほとんど
なく、すぐに出港の準備にかからなければならなかった
時かな?
たとえば55日間、ぶっ通しで航海して入港。2日間の
自由時間、そして出港、また30日間航海・・・。陸が
恋しくもなりますよね」

航海中何度も損傷し、インドラさん達をヒヤヒヤさせた
メインマスト(主檣)の根元
【SF】何かご趣味はお持ちですか?
【Ind】「船大工の仕事にホレ込んでいるので、趣味は『仕事』。
あとは本を読んだり絵を描いたり・・・。大阪に寄港した
ときに和弓を買ったので、これから弓道も始めるつもり。
スペインにもいくつか道場があるんですよ」
【SF】船大工でなかったら、何をしていたと思いますか?
【Ind】「物理学の資格をとって、どこかの研究所で研究者として
働いていたかもしれません」
【SF】最後に、私達SFでは重要文化財<明治丸>のリフィット
ボランティアにたずさわっていますが、そういった歴史的
帆船の保存について、思うところがあれば聞かせて
ください。
【Ind】「歴史のある古い帆船が保存されなくなったら、ぼくの
職業は意味をなさなくなってしまいますね(笑)。
近年、人類が何世紀もかけて培ってきた造船の技術や極意
が失われつつあるのは、残念なことだと思います。
<明治丸>のリフィット、できることなら僕もお手伝いに
行きたいところです」
有難うございました!
そして世界一周航海達成、おめでとうございます!!
(インタヴュー&翻訳:Qたろー)