2010年07月10日

■□ 南十字星の下、三色旗ひるがえし   − Velas Sudamerica 2010 参加レポート - その1 by Qたろー □■

今年2月から約5ヶ月間、南米大陸から中米にかけて行われた帆船
レース「Velas Sudamerica 2010」は、中南米で開催された初の大
がかりな帆船まつりです。
2月にブラジルをスタートした船団は、先月6月23日メキシコのベラ
クルスに入港、28日をもってこの記念すべきイベントを終了しま
した。

この帆船まつりに参加したオランダの練習帆船〈エウロパ〉にトレ
イニーとして乗船したQたろー、22日間南太平洋を航海してきまし
た。現地では20年来の友人に再会したり、昨年来日した船のクルー
とバッタリ出会ったり、船上で献花の式典をしたり(!)とても密
度の高い旅だったので、少しずつお話ししていきたいと思います。

Europa.jpg
ひるがえる三色旗、オランダの旗。


◆きっかけは二年前◆

アルゼンチンの<リベルタ>が来日した折、大使館の駐在武官から
「2010年に、アルゼンチンとチリの海軍が主催する帆船レースが中
南米で開催されるよ」と聞いたのが始まりだった。

2010年といえば、中南米の多くの国が、かつての宗主国スペインか
ら独立して200周年を迎える年だ。そしてこのイベントには、練習
帆船を持っている中南米諸国のほとんどの国が参加するはず、
とのこと。
エライこっちゃ、これは見逃せないぞ!さっそく貯金を開始。

公式サイトを教えてもらいウォッチを始めたところ、帆船レースを
仕切るのは、やはりチリとアルゼンチン両国の海軍である。
ふつう海外の帆船まつりやレースといえば、STIやASTA(注
1)が仕切るものが大半だが、2005年にポーツマスからレポートを
お伝えしたイギリスの「IFOS」も、そういえば海軍が音頭を
とっていたっけ。

両者の一番の違いは、例えば海軍が仕切る方は、帆船だけでなく
一緒に灰色の巡洋艦や潜水艦なども公開され、ついでに戦闘機の
デモンストレーションなどもあったりすることだろう。必然的に、
民間のセイルトレーニング協会主催のイベントとは、かなり雰囲気
が異なる。とはいえ、現存する練習帆船の多くは海軍所属で、とく
に中南米の練習帆船の九割が海軍の船であるのは、否めない事実だ。

Callao 1.jpg Callao 2.jpg
灰色の軍艦と並んで接岸するVelas Sudamerica 2010参加帆船たち。
ペルー、カヤオにて。


◆ケープホーナー◆

さて、この帆船レースで、船団は南米大陸東側、ブラジのリオデ
ジャネイロを起点とし、大西洋沿いに南下。アルゼンチンとウルグ
アイをちょこっと行ったり来たりした後、大陸最南端のホーン岬を
目指す。

この海域は、風速60m、季節や場所によっては100mに達する暴風
が吹く難所で、帆船時代、ここを航海したことのあるセイラーは
敬意をこめて「ケープホーナー」と呼ばれた。特にアルゼンチン側
からチリ側へ抜ける西回り航路は、地球の自転で発生する偏西風の
ため風浪・海流ともアゲインスト(逆向き)になり、セイリングは
より困難となる。

そういえば、現在ハワイから日本に向かってラストスパート中、
ヨット<酒呑童子V世>で世界一周中の斉藤実さん(76才)の今回
の航海「チャレンジ8」も西回り航海だ。春先、チリ沖で遭難した
ところ、チリ海軍から要請された漁船にレスキューされたと友人か
ら聞いた。

つまり機関がついた現在の帆船にとっても、このホーン岬航海が大
変なのは同様で、この海域を帆走で航海し国境を通過した帆船に
は、チリ海軍からディプロマ(通行証明書)が発行される。現代の
帆船乗りにとってもホーン岬はまさに「免許皆伝道場」(米窪太刀雄著
『海のロマンス』)なのだ。

diploma y  
Rod.jpg
ホーン岬をまわった「勇敢な帆船乗り」の証明書を手にする
<エウロパ>White watch仲間のアメリカ人、ロッド。
めっちゃ嬉しそう!


さて、今回のVelas Sudamericaは、このホーン岬をまわってチリ側
に出たところで、太平洋側をずいーーっと北上。パナマ運河を抜け
てカリブ海へ出ると、ゴールは目の前、メキシコのベラクルスだ。

スタートからゴールまで、航程は南極に近い冷たい海から、汗ダラ
ダラの赤道を超える、足かけほぼ5ヶ月間の長い航海になる。
そのため、さすがに最初から最後まで、全寄港地でのイベントに
参加するのは、11隻の参加船のうち8隻。
アルゼンチンの友人の話では、本国の議会で予算が下りなかった
そうで、<リベルタ>はゴールのメキシコには行かず、途中で
「戦線離脱する」とのことだった。残念。
(っていうか、主催国の一つなのに〜;;)


◆<サンタ・マリア・デ・ブエノスアイレス>建造中!◆

件の駐在武官氏によれば、アルゼンチンでは現在<サンタマリア・
デ・ブエノスアイレス>(以下SMBA)という、二本マストのブリ
ガンティンを建造中、とのこと。南米で唯一、造船業を看板のひと
つとするアルゼンチンらしいプロジェクトと言えよう。
ちなみに<リベルタ>は、中南米の練習帆船で唯一、自国製 made
in Argentinaだ。これは大いにアルゼンチン人の誇りとするところ。

<SMBA>は青少年育成用の練習帆船ということで、一般民間人
も乗船可能らしい。ぜひその船で、時速60メートルの烈風が吹く
ホーン岬を廻ってみたーい!…またもや、冒険心がムクムクと湧い
てしまった。

Kiosco en La Libertad.jpg
今回の新発見@リベルタ。艦内に「売店」があるなんて、知りま
せんでした☆軽食、雑貨、肩章、<リベルタ>グッズも販売。
お店のオヤジさんは、<リベルタ>と航海歴10年の生き字引!


イベント開催二ヶ月前まで<SMBA>のHPを見張っていたが、
数年前の経済恐慌の余波もあってか、工事は遅々として進まない。
航空券の手配もあるし、困ったなあ・・・。仕方なく、すでに
エントリーが決まっていた唯一の民間船、オランダの<エウロパ>
に申し込むことにする。
申し込みフォームを送ると、すぐに折り返し事務局からレスが
あった。「そのレグ(港から港への航海のひとつの区間) はすでに
定員に達しているためキャンセル待ちになります」がぃーん!!

やはり世界は広い。私と同じような変なこと?を考える人が他にも
いたか。もっとも、今回の帆船レースで一般民間人が乗船できるの
はこの<エウロパ>だけなので、必然的に集中したのだろう。
う〜ん、もっと早く<SMBA>を諦めるべきだったか・・・(汗)。


◆大地震!!◆

ホーン岬はダメでも、なんとかチリをからめて乗りたい。バルパラ
イソからペルーまでの航海にしてみようか・・・えぇい、せっかく
遠いところまで行くんだから、もういっこ乗っちまえ!と、さらに
先のエクアドル、グアヤキルまでの2航海に乗船することにする。

事務局に問い合わせると、バルパライソ〜カヤオ(ペルー)は2人用
のキャビンに空きあり。カヤオ〜グアヤキルは6人用OK。メールで
何回か確認事項をやりとりし、申し込みフォームやその他必要書類
を再度送ると、すぐに乗船費用の振り込み先が送られてきた。
指定されたオランダの銀行に国際送金し、さて次は航空券の手配♪

と思った矢先!乗船費用を国際送金した次の日に、なんと南米チリ
南部で大地震発生!のニュースが飛び込んできた。震源地は前回
2003年、タルカウアーノにあるチリ海軍のドックを訪れたときに
滞在したコンセプシオン郊外とのこと。

地震の被害は広範囲に及び、中央部の首都サンティアゴや、私の乗
船地であるバルパライソにも大きなダメージをあたえたらしい。ラ
ジオやネットのニュースで、現地ではすでに100人近い人が亡くなっ
た模様、と報道されていた。瞬間、その地域に住む数人の友人、
知人たちの顔が頭をよぎる。無事だろうか!? 怪我をしてないだろ
うか!? タルカウァーノの海軍工廠は!?そしてそして、帆船レー
スは!? げげげーー!乗船費用、振り込んじゃったぞ!;;

mercado sin techo.jpg museo de Esmeralda 1.jpg La proa de Esme 1.jpg
左上:地震で発生したガス漏れで大爆発が起き、屋根がふっ飛んだ市場。
右上:ソトマジョール広場にある、半地下の「エスメラルダ1世博物館」。
  地震でダメージを被り閉鎖中。
左下:公開中の「エスメラルダ1世博物館」。老朽化し、防波堤にするため
   埋められた木造フリゲート艦<エスメラルダ1世>の船首部分。
   (2003年撮影)
3枚ともチリ、バルパライソにて。


とにかく友人達に慌てて「みんな無事!?」とメールすると、次々と
「ものすごくびっくりしたけど、なんとか大丈夫」とレスが返ってきた。
あぁ、良かった!
しかし首都のサンティアゴでは国際空港が閉鎖され、バルパライソへ
つながる高速道路は、あちこちで陥没、断裂しているようだ。
この区間は電車がないので、移動手段は一般的に車(タクシー or
高速バス)だ。飛行機が飛んだとしても、内陸から港まで移動できる
のだろうか?

エウロパの事務局は「こちらもまだ状況確認中につき、しばらく様
子を見て下さい」と言う。まぁ、私の乗船する航海まではまだ二ヶ月
近くあるし、その間に空港や道路も、少しは復旧されるに違いない
(← 希望的観測)。しばらくネットで情報収集する日が続く。

(続きは次号で!)


(注1)STI:Sail Training International
ASTA:American Sail Training Association
(注2)2010年7月現在、やっと船体が完成しつつある段階。
    年内完成は無理かも?


posted by SaltyFriends通信 at 09:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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