昨年10周年を迎えた、青森県の海洋博物館「みちのく北方漁船博物館」。
今回の「よろず」は、こちらの博物館の学芸員、石山晃子さんのご登場です!

昨年の当「Salty Friends通信」5月号から3回シリーズでお届けしたGinga
さんのレポートにもありますように「みちのく北方漁船博物館」は、約200隻
の木造船をコレクションする、わが国最大の漁船博物館です。
67隻ある重要有形民俗文化財の「ムダマハギ」(丸木舟の様式を残した小型
漁船)は北日本特有の構造をもち、丸木舟~弁才船へと発達する和船の歴史
の中でも、非常に貴重な資料となっています。

そして「みちのく北方漁船博物館」と言えば、皆様ご存じ「北前船」こと北
前型弁才船<みちのく丸>!
帆走可能な実物大の和船としては、現在唯一の存在であり、昨年のNHK大
河 ドラマ「篤姫」では、篤姫が薩摩から江戸に向かう時に乗る「御座船」役
として登場。ドラマの中でも颯爽とした帆走を披露してくれました。

今回はこの「みちのく北方漁船博物館」から、東京お台場の「船の科学館」
へ研修にいらした学芸員の石山さんに、忙しいお時間の合間を縫ってお話し
を伺 いました。


「船の科学館」3階、<両徳丸>の前で。


石山晃子さんプロフィール
お名前:石山晃子(いしやまあきこ)
ご出身:山形県山形市 大学進学で青森へ。ご専攻は日本史学と民俗学。
学芸員資格は在学中に取得。
ご趣味:美術鑑賞(日本画、漆器など)、茶道、旅行(京都・奈良・金沢が好き!)
「みちのく北方漁船博物館」(以下『みちのくM』)学芸員としては3年目。


以下、石山晃子さん:〔AI〕(敬称略)
Salty Friends:〔SF〕

SF:なぜ「みちのくM」でお仕事をなさることに?

AI:青森の大学に進学し、卒業後すぐ青森県の県史編さん室で、嘱託として
   働きはじめたんです。もともと「みちのくM」に興味はあったんですが、
   しばらくして採用の話があり、学生時代に学芸員の資格をとっていたこ
   ともあって、勤めることになりました。

SF:石山さんは日本史学を専攻なさっていたそうですが、船の博物館という
   ことでの、戸惑いのようなものはありませんでしたか?

AI:たしかにちょっと畑違いではありますが、当館はそもそも民俗資料を収
   蔵・展示する博物館です。海洋系、船舶系の専門分野のほかに、いろい
   ろな角度からみていく必要があると思っています。

SF:では<みちのく丸>について教えて下さい。北前船を復元建造するにあ
   たり、一番大変だったのは船大工さんを集めることではないか、と思う
   のですが・・・?

AI:私は建造時、まだ「みちのくM」の職員ではなかったのですが、当時の
   会長が中心となって、9ヶ月で建造したと聞いています。船大工さんを
   集めることはもちろん、資金集めも大変だったと思います。
   
   北前型弁才船は、和船の建造技術の集大成です。現在<みちのく丸>は
   帆走できる日本で唯一の復元弁才船ですから、ほんとうに貴重な存在だ
   と思います。
   普段、冬期期間中は、以前造船所だったところに上架(=船を陸に上げ
   ること)して保存し、春のゴールデンウィーク前に下架。一般公開や体
   験航海などを、秋口まで行っています。 


2009年9月 陸奥湾を帆走中の<みちのく丸>
       

SF:なるほど。では<みちのく丸>の運営スタッフとして、日ごろ一番大変
   なこととは何でしょうか?

AI:あちこちの海洋博物館を訪れて思うのは、保存船の維持ではどこも同じ
   ように苦労しているんだなぁ、ということ。<みちのく丸>に関しても、
   例えば上・下架するのも体験航海をするのにも、少なからず費用がかか
   ります。
   航海にその都度必要な、20~30人のボランティア帆走スタッフを手配す
   るのも大変!和船の操船ができる方は、少ないですしね。
   
   でも最近は、職員もボランティアの皆さんも慣れてきて、「開き走り」
   (=アビーム)のほかに、「間切り走り」(=クローズ・ホールド)な
   ど、色んな走りができるようになってきました。

   保存するにあたっては、腐朽など注意しなければならないことが沢山あ
   りますが、棟梁の指導を受けながら、船大工経験者の職員がメンテナン
   スを担当しています。
   <みちのく丸>の運営はいろいろと大変なこともありますが、一番大切
   なのは、このプロジェクトそのものを継続し、そしてその意味を伝えて
   いくことかもしれません。

 
左:ろくろ廻し体験
右:航海中の<みちのく丸>を伴走船より眺める。
 

SF:そうですね。何でもそうですが、続けることが一番大変ですよね。 そ
   ういえば、石山さんは<みちのく丸>で航海なさったことはあるんで
   すか?

AI:はい。夏場に2回ほど、体験航海に同乗しました。初めて乗った時は、
   思っていたより全然揺れなくて、びっくり!木造船って、意外と安定感
   があるんですよね。       

SF:そうなんですか。私はまだ「みちのくM」を見学したことがないんで
   すが、ぜひ今年は体験航海に参加してみたいです!
   ところで、「みちのくM」でお仕事を始められた頃と今では、船に対す
   る印象や考え方に変化はありましたか?

AI:山形の山あいの土地で育ったので、船にはあまり縁がなかったんですが、
   「みちのくM」で仕事をするようになって、とくに人間と船との関わり
   について深く考えるようになりました。
   そして目下のテーマは「学芸員のあり方」。マネージメント、企画運営、
   調査研究を常にリンクさせながら、いかに博物館の目的達成を進めてい
   くか、ということで毎日頭がいっぱいですね(笑)。


<みちのく丸>の堂々たる帆走姿。昨年9月、陸奥湾にて。


SF:石山さんは結構、仕事人間でいらっしゃるんですね(笑)。長くなって
   しまいましたが、では最後にSFにメッセージをお願いできますでしょ
   うか?

AI:<みちのく丸>は、帆船に興味のある方に是非観ていただきたい船です。
   2010年も、できれば体験航海を行いたいと思っていますので、3月頃に
   HPでお知らせするスケジュールをご確認いただければ、と思います。
   
   そうそう!2010年12月に、新青森駅に新幹線が開業するんです。アクセ
   スもさらに良くなりますので、ぜひ遊びにいらして下さい!


研修中の貴重なお時間を、どうも有り難うございました!
(インタビュー:Qたろー&SFボラチームGinga)