先月の当『Salty Friends通信』でもお知らせしました「日蘭通商400年記念
歴史的造船施設シンポジウム」。このシンポジウム実行委員会、産業考古学
会の中川洋先生より、SFにメッセージをいただきました!
Gingaさんの詳細なレポートと一緒にご紹介いたします。

                      劣

「皆さん、はじめまして!
日蘭通商400年記念歴史的造船施設シンポジウム実行委員会の中川 洋です。
今回のシンポジウムでは、Gingaさんにご来場いただき、レポートまで書いて
いただいて光栄に存じます。

私たちは、これまで浦賀ドックの産業遺産としての価値に着目し、その保存と
活用について、考えて参りました。
今回のシンポジウムを通じて、世界的な造船技術史、乾ドック史という観点か
ら、あらためて浦賀ドック(唯一の煉瓦積みドック)の位置づけを明確にし、
また、世界の乾ドック研究者と手を携える好機となりました。

今後「船の科学館」「横浜みなと博物館」での写真展開催、シンポジウム論文
集の刊行などが予定されています。また、ご案内いたしたいと思っております
ので、その節はよろしくお願い申し上げます。
それでは、また。

日蘭通商400年記念歴史的造船施設シンポジウム実行委員会
  法政大学文学部兼任講師 中川 洋」
                     
                   
                     劣  
  
中川先生、お忙しいところメッセージを有り難うございました!これからも
何卒よろしくお願い致します。
写真展、楽しみですね♪
以下はGingaさんによる、参加レポートです。


2009年11月28日、29日の両日、「船の科学館」で産業考古学会主催の「日蘭通
商400年記念、歴史的造船施設シンポジウム」が開催され、このシンポジウム
の2日目午後の講演を聴講してきました。

会場は<羊蹄丸>のアドミラルホールで、講演のほか、ホール内には各地の歴
史的な乾ドックの写真が展示されており、休憩時間などに見ることが出来るよ
うになっていました。
聴講者は3、40人ほどで、浦賀の乾ドックの事を調べているという高校生が
先生と共に参加されていました。


1.「ドイツの煉瓦積み乾ドックの歴史と技術(ブレーマーハフェンを中心に
して)」

  ◆ Dr.D.J.Peters 国立ドイツ海事博物館・ブレーマーハフェン
 
発表は英語ですが、産業考古学会の方の通訳があり、また日本語で書かれた
講演予講集も配布され、内容を理解しやすいよう運営にも工夫されていました。
講演自体は、ドイツの歴史的ドック他施設の写真を多数使ったもので、ドイツ
のドックの歴史と現況の紹介でした。

以下講演の概要です

ドイツの初期のドックは木製で、観音開きの扉が使われた。その後1900年頃
から、石とコンクリートが使われるようになった。
1860年建造のブレーマーハーフェンのドックは幅15m、長さ81m+58mの二重
ドックで、1945年に街の瓦礫で埋め立てられた。

現在使用されている最古のドックはHusum(シュレスウィッヒ・ホルシュタ
インの北海沿岸)に1877年に建造されたドックで、壁面はレンガ積み。長さ70
m、幅34m、深さ10.2m。付近の建物は記念物として保護されている。

船のサイズが大きくなるにつれ、大型のドックが作られるようになり、ブレー
マーハーフェンのカイザードック1(1899年)では、長さ222m、幅25m、喫水
10mで、煉瓦と花崗岩の枠にコンクリートを入れる方法で建造された。

ドックの床は、厚さ7mのコンクリートで作られている。その後さらに大型のカ
イザードック2(長さ300m。QE2の改造などを実施したドック)他のドック
が建造された。キールの旧帝国造船所の第5ドックは石造で、表面にレンガ積
みの方式で1897年に建造された。

裂出席者からの質疑応答裂

Q1:歴史的な資料は国で管理しているのか、州ごとに管理しているのか。
A1:ドイツでは州ごとに管理している。(D.J.Peters)
Q2:資料が公開となる期間は決まっているのか
A2:オランダでは国が管理するものは30年で公開。州管理のものは州ごと
   に違う(オランダの参加者)
Q3:ドイツのレンガの積み方はどのような方式か
A3:イギリス式(D.J.Peters)


2.「オランダからの技術移転:日本の煉瓦積み乾ドックの特徴」
 
  ◆ 若村国夫 岡山理科大学教授&中川 洋 産業考古学会理事

講演では若村教授が話をされ、こちらも図面・図表類のほか現地の写真を
使っての発表でした。
 
 
左:若村教授の講演風景
右:横浜ドック


講演の概要

レンガ積みのドックは、日本国内では浦賀1号ドック、石川島造船所浦賀工場
の川間ドックの2箇所のみしかない。同時期の他のドックでは石積みである
のに、この2箇所だけなぜレンガ積みなのだろうか。

レンガ積みドックの技法はオランダで発展した。オランダでは石材が入手しに
くいためレンガ積みが発展し、日本にもオランダの技術が導入された。浦賀
ドックの設立者には、オランダに留学した榎本武揚がおり、オランダ留学経験
者の古川庄八を雇用した。
日本では石材の入手は容易であるが、加工の手間・工賃を考え、レンガ積みを
導入したと思われる。

日本のドックには、壁面の階段が多いという特徴がある。移動時間を短縮し作
業効率を上げる狙いと思われる。階段配置にも特徴があるが、この配置の出所
は今後の研究で明らかにしたい。
ドックの寸法の変化は、船の寸法の変化と合っており、これはヨーロッパの
ドックと同じ傾向である。


横須賀の石積みドック


3.「横浜港と横浜乾ドック」 
 
  ◆ 堀勇良 元文化庁調査官

講演の概要

横浜ドックには横須賀から技術者が来ており、フランス流の技術が使われて
いる。ドック建造場所の地質(支持基層)の違いにより、ドック壁面の建造方
法が異なっている。
頭部では壁面を外側地層で支持し、海側ではドック底面で支持するようになっ
ている。壁の裏側を支えるコンクリートでは、ドック壁面の石を整形した時に
出た石を骨材に使用している。

2号ドックは1990年に解体。30m北に移設し、現在はドックヤードガーデンと
して復元した。復元にあたり、長さを約20m短縮した。


主催した 産業考古学会 については、産業考古学会のサイトを参照ください。

今回は「船の科学館」との共催でしたが、品川に有る「物流博物館」と共催
での講演会なども行っています。
最近では、2009年7月に「講演会 幻の建造船を追って」として
”伊達政宗が石巻で建造した慶長遣欧使節船の「技術」と「志」”
”明治の川蒸気船・通運丸建造をめぐる謎”といった内容の講演会が開催され
ておりました。

物流博物館に関してはこちらを参照ください。