2009年09月10日

■■「前線に捕まるな!太陽を追いかけろ!2009年夏、帆船あこがれ航海記 2/2」by ぶんごー■■

先月よりスタートしました<あこがれ>日食航海のぶんごーレポート、
さて、後半はどんな航海だったのでしょうか。

日食も終わり、8日目から、スタートです。

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  日食の興奮も落ち着いて、航海8日目、23日です。
  梅雨前線は相変わらず九州南部に停滞中ですが、前線の北側にでたせいか天気は悪くありません。というか、この航海ではめずらしい晴れ空ですね。今日は本当は硫黄島に上陸予定だったのですが、最初の予定より船がずっと東に流されてしまって距離が遠くなりすぎてしまいました。ということでまずはセイルを増やしてスピードを上げます。毎日少しずつ帆を張り増したので、今日で12枚の帆のうちにスクエアセイル(横帆・帆桁についている船の船首尾に対して直角につけられた帆)2枚を除いた10枚の帆が広げられたことになりました。船の左手にはどこまでも細長い種子島が現れては消えていきました。
  午後からはヤードと呼んでいる帆桁に登るヤード渡りの練習。これで横帆を開いてもみんなで作業ができるようになりました。硫黄島には確実に近づいたのですが、夜間の入港を避けるために今日は鹿児島の山川にアンカーと決まりました。
  ということで、夕方にはすべてのセイルを畳むことに。畳んだ後にセイルを固定するガスケットと呼ばれる作業、今日からはほとんどトレーニーさんにマストに登ってやってもらいます。まだまだぎこちないところもありますが、みなさん積極的に参加して下さいます。夜の航海がないので、当然夜の当直もありません。薩摩富士と呼ばれる姿の美しい開聞岳を間近に見ながらおやすみなさい。

  明けて24日。航海もいよいよ9日目です。前線は相変わらず九州南部に停滞中。お天気は相変わらずの薄曇りです。どうも、スカッとしませんね。
  船は朝6時に錨を上げて硫黄島に向かいます。午前中はボンクのシーツの交換、服や靴の洗濯にいそしみます。硫黄島は火山の島。小さな島ですが島の中央には山がそびえ立っていて、近づくていくとかなり峻険なイメージの島です。港に入っていくと、防波堤の内側は水の色が茶色い!

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硫黄島の港(海の色が赤いのは硫黄分が海水と反応しているため)

  実はこの島の水は鉄分が多く、それが海に流れ込むと酸素と反応して赤茶色に発色するとのこと。防波堤の内側は水の入れ替わりが少ないので、外海とははっきりと色が違って見えるんだそうです。昼食後に上陸。南国らしい丈の高い草の間を縫うように続く細い道をあるいて約40分。海岸に湧きだした温泉をただせき止めただけの東温泉に到着です。海に面した岩場にいくつかの湯船を作って、高い湯船から順番にお湯を下へと流して溜めているのですが、一番高い湯船は熱くて入れないくらいでした。お湯をなめてみるとスッパ苦い独特な味がします。火山の島の温泉なので成分がかなり濃いみたいな気がしました。お湯につかりながら海に目をやると、海岸の岩に波が激しく打ち寄せていて野趣満点の温泉でした。
NEC_0150.jpg
硫黄島の温泉

  温泉を堪能した後はそれぞれに島を散策しながら船に戻ります。まぶしい日差し。道の両側に続く緑の濃い薮。だれも歩いていないアスファルト。どこからどうみても時間の流れ方がゆるやかな南の島の午後でした。温泉で疲れたし、歩いて帰ってきて汗もかいたので、島に一軒しかないお店でジュースとアイスクリームを補給。小さな公園に気持ちのよさそうな木陰があったので、遠くに泊まっている「あこがれ」を眺めながらアイスを食べました。船に戻って夕食後に出航です。短い時間でしたがいろいろ思い出の多い硫黄島でした。
  次の目的地は鹿児島の志布志港。食料と水を補給する予定です。今夜は夜を徹して走って、明日の朝には入港です。上陸で疲れていますが今夜ももちろんみんなは航海当直です。
  とうとう10日目。長いこの航海も先が見えてきました。船ではすっかり気にされなくなってしまいましたが、日付と曜日は25日の土曜日です。前線は北に上がってしまったということで船の周りは薄曇り。福岡や広島では局地的な大雨だったらしいですね。
  午前10時に志布志港着岸。今日もおにぎりをもってみんなは最後の上陸です。ぼくは疲れたので船に残って、だれもいなくなった船で最後の洗濯&お昼寝してました。静かな船もまたいいものです。みんな街中を散策したり、温泉(また!)に入ってきたり、近くに泊まっていた自衛艦の一般公開に行ってきたり、思い思いに時間を過ごしたみたいです。
  夕食後はちょっと変わったレクチャーです。司厨長(船のコックさん)、ショウさんによる質疑応答のコーナー。船の食事メニューの裏話や料理人としての修行の話など、滅多に聞けないお話が盛りだくさんでした。今日は志布志停泊なので夜の航海当直もありません。明日からは一路大阪に進路を向けて太平洋をひた走る予定です。ゆっくり寝ましょう。

  航海は11日目に突入。今日26日の日曜日、志布志ではその名も「志布志祭り」が行われるそうで、夜には花火も予定されているとのこと。なのですが、前線が九州北部に停滞中で朝の天気は雨。風もちょっと強くて、花火ができたかどうかは微妙な感じでした。福岡を中心に九州北部は大雨だったらしいですね。出航後は帆を四枚張って太平洋に乗り出します。午後には2000年の世界一周航海に関わった機関長のツツさん、一等航海士のマツさんによる世界一周のお話。みなさん熱心に聞いてらっしゃいました。
  この日は夜も走り続ける予定で風もいいので夕方にさらに二枚セイルを張り増します。記憶があやふやなのですが、確か、この辺りからエンジンを止めて風の力だけで走る帆走に入りました。なんとこの航海、こんなに長く走っていたのに、いろいろな事情があっていままで帆走はほんの少しもできなかったのです。帆走距離を少しでものばそうとセイルをあげて、あこがれは黒潮にも助けられながら大阪に近づいていきます。

  12日目、27日。ついに航海もカウントダウンに入ってきたみたいです。前線は相変わらず本州付近に停滞。この日は関東で雨脚が強まったらしいのですが、船の周りはそこそこのお天気でした。船は四国沖をぼちぼちと進んでいきます。
  朝起きたら、セイルが二枚増えてました。どうやら風向きがよかったので夜中に当直班で帆を増やしたみたいです。朝食が終わって全員がそろってからさらに四枚の帆を上げます。これで「あこがれ」が持っている12枚の帆をすべて張る「フルセイル」がみごとに完成しました。天気図を見るともう少し崩れそうなのに、どういうわけか風が弱くて波もあまりなく、天気も悪くないので、ゴムボートを降ろして海の上からフルセイルの「あこがれ」を見ることにしました。
  まずは帆の角度を調整して船の行き足(スピード)を落とし、船がほぼ止まったところでゴムボートを降ろします。5、6人ずつ交替でボートに乗って「あこがれ」から離れてセイルを張った様子を見たり写真を撮ったりします。デッキの上からだとセイルを張ってもそんなにはかっこよくはないのですが、離れて見るとやっぱりかっこいいです。しかも自分たちで帆を上げたのだから感動もひとしおです。昨日からの帆走でスピードが落ち、今夜はエンジンで走らないと帰りが間に合わなくなってしまったので、ボートを回収した後に二枚を残して十枚のセイルを畳むことになりました。
  16時前からセイルを畳み始めて、みんなで手分けしてガスケットにかかります。トレーニーのみんなもかなり手慣れてきてはいますが、やはり10枚のセイルを畳んでガスケットするのはかなりの手間がかかります。作業がすべて終わったのはもう18時前。終わった時には全員くたくたになってました。
  夕食もいつもより一時間半も遅くなってしまいましたが、みんなで力を合わせて無事に作業は終了しました。今夜も夜航海。トレーニーの航海当直も続きます。  いよいよ残すところあと二日の13日目、28日です。天気図からは前線が消えましたが、今日船が走っていく四国沖から紀伊水道にかけては気圧の谷っぽくてお天気は予断を許しません。
  さて本日は「トレーニーズデイ」です。トレーニーズデイとはこれまでの航海の集大成として、トレーニーたちだけで船を動かすことにチャレンジする日なのです。昨日のうちに、トレーニーさんたちだけで、船長や一等航海士、セイルを張る時に指揮を執るセイル・オフィサーなどなど、船を動かす様々な役職を決めてもらっておいて、今日の朝の10時から船が錨を降ろすまでの間、自分たちで決めた役割を
果たしながら船を動かしていきます。アドバイスを求められればクルーも助言はしますが、危険な場合以外の最終決定権はトレーニーの船長さんたちにあるのです。
  10時のミーティングで船長からトレーニーの船長、ウメさんに船が引き渡されました。その後ウメさんから今日の予定が発表されました。目的地は関空沖。紀伊水道を北上し、友ヶ島水道を抜けて大阪湾に入り、16時頃のアンカーを目指します。あいにくと風は正面。昨日の夜から帆を2枚だけ残してエンジンで走っていましたが、今日も
とりあえずはこのままの状態でいくということも、船長からみんなに伝えられました。
  トレーニーが交替で当直に入りながら船は進んでいきます。

  午後からはまずトレーニーで作った運動会実行委員が企画した船上運動会が開催されました。実は四、五日前からずっと企画を立てて準備を進めていたのですが、天気や海の状態、上陸など他のスケジュールとの兼ね合いなどで今日まで開催できなかったのです。トレーニーたちの四つのワッチとクルーチーム、ボランティアチームの六チームが参加して得点を競います。競技に使う小道具もロープ、デッキブラシ、スナップ(古いロープをほぐして作ったぞうきんのようなもの)、ヤシの実(毎朝のデッキウォッシュで使っているもの)などなど、帆船ならではのものばかりです。運動会の最中に船の方向転換のためのタック替えという作業も割り込んだりしてきましたが、みな動きがよく作業はスムーズに終了しました。まあ、運動会の中断に伴う道具の撤収や再開のための準備なんかも作業に負けず劣らずにスムーズでしたが。
  その後も航海は順調に進み、ほぼ予定通りの時刻にアンカーできるメドがたったので、夕方からはセイルを畳み始めました。セイルを畳むための号令や畳んだセイルのガスケット作業などもすべて、トレーニー主体で行い、16時半頃、船は無事に関西国際空港近辺にアンカーし、デッキではトレーニーからクルーへの船の返還式も行われて、トレーニーズデイは無事に終了しました。

  二週間の長い航海でしたが、とうとう今夜は「あこがれ」での最後の夜になってしまいました。ということで、夕食後にデッキでフェアウェルパーティーが開催されました。
  無事の到着を祝うのと航海の終了を記念するイベントです。運動会と同じく、これも企画や運営はトレーニーさんたちにまかされています。各ワッチやクルー、ボランティアごとの出し物がありました。替え歌や「あこがれ」の日常を描いた寸劇、謎のお遍路集団などそれぞれ工夫をこらした出し物でした。また運動会の優勝ワッチや航海の八日目に一番早く種子島を発見した人、航海中に募集した川柳の大賞受賞者などの表彰式も行われましたし、航海中に誕生日を向かえたトレーニーさん、二人に船からささやかなプレゼントが贈られました。またトレーニーからクルーひとりひとりに、お礼の気持ちを込めた表彰状も送られました。みんなで大笑いした楽しいひとときでした。
  パーティーが終わると久々ののんびりした時間です。みんなゆったりとした気持ちで思い思いに最後の夜を過ごしました。

  とうとう13泊14日の航海の最終日がやってきました。梅雨前線はやや北上したみたいですが、船の周りはまずまずのお天気です。ぶんごー、この文章を書くために航海期間中の毎日の天気図を見返してみたのですが、ほぼ船の動きに合わせて南下と北上をくりかえしていたような気がしました。
  普段の年ならば七月の後半になると小笠原高気圧が強くなって梅雨前線はなくなってしまうのものだったのですが、今年はちょっと変わっていたみたいです。トカラ付近まで南下すると台風の影響で天気が悪くなる可能性は考えていましたが、まさかここまで前線に付き纏われる航海になるとは思ってもみませんでした。ちなみに、天気図が気になった方は「気象人」というサイト(http://www.weathermap.co.jp/kishojin/)の気象ダイアリーというコンテンツで過去の毎日の天気図を見ることができます。ぼくもこの航海記を書くのに参考にさせてもらいましたので、興味のある方は覗いてみると面白いかもしれません。

  さて最終日、目的地の大阪南港はもう目の前。ということで午前中は錨をいれたままでプログラムを進めます。
  最後のプログラムは専科講習。船側からいくつかのプログラムを用意して、トレーニーさんに興味のあるものを選んで参加してもらうシステムです。メニューは「航海術」「帆走理論」「ロープワーク(ロープを使ったアクセサリー作り)」「トップオブザマスト(マストのてっぺんまで登る)」なんてところでした。これでほとんど航海は終わったようなものです。
  午後から船は錨を上げて大阪に向かいました。トレーニーさんたちは荷物をまとめ、二週間暮らした船の中を大掃除です。十五時半、「あこがれ」は二週間ぶりに南港、OZ岸壁に接岸しました。太陽を追いかけて、前線に付き纏われた航海は無事、幕を下ろしました。

  スタッフとして参加した感想としては参加者の年齢層が高い上に長い航海だったのですが、怪我や体調を崩した人がいなくてほっとしました。トレーニーがみなさん大人だったので、全体の雰囲気もよく、よい航海だったと思いました。日食はもちろん印象に残っていますが、滅多にいくことができないだろう硫黄島に上陸できたこともとてもよかったです。
  硫黄島の温泉近くの岩場に、一カ所だけ潮だまりみたいになっているところがあって、岩場伝いに海に入れるようになっているところがありました。大きな岩がいくつか重なってちょうど波が直接打ち込んでくるのを防いでくくれている上に、岩場から温泉のお湯が流れ込んでいて水が生温くなっているので、水につかって波に揺られて遊んでいるとすごく楽しい上にあまり疲れもしないという水遊びには最高の穴場を見つけました。
  あんまり楽しいので自分がスタッフであることを忘れて遊んでいて、トレーニーのみなさんに「もうすぐ潮が満ちてくると危ないからさっさとあがってこい」と注意されたことも、今となってはよい思い出です。いや、文章では伝わりきらないと思いますが、ホントに楽しかったんです。
  二週間の長い航海は年に一度あるかないかです。休みを取る手間や乗船費用のことを考えるとなかなか負担は大きいとは思いますが、
めったに経験できない航海だというのも確実な話です。一度逃すと次のチャンスはなかなか回ってはこないと思いますので、タイミングが合ったり、行き先が興味のあるところだったりしたならば、思い切って参加してみるのがいいと思います。
  きっと、忘れられない経験ができることでしょう。

  ではみなさん、今度は船のデッキでお会いしましょうね。

(ぶんごー)


posted by SaltyFriends通信 at 09:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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