<あこがれ>日食航海のレポートをぶんごーに書いてもらいました!
航海前半と後半に分け、2回シリーズでお届けします。

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 八月になってもじめじめした日が続いてますが、やっと日差しもまぶしくなってきてそろそろ夏本番ですね。みなさん、夏休みの予定はどうなってますか?旅行とか帰省とかいろいろあるんじゃないですか?夏休みを首を長くして待っている方には申し訳ありませんが、ぼくはもう夏休みを楽しんできちゃいました。二週間の長い夏休み。行き先は、もちろん海の上です!

 こんにちは。ぶんごーです。去年の夏にも帆船「あこがれ」の航海記を書かせていただきましたが、今年も航海してきました。7月16日から29日まで、大阪から南の海に向かった「あこがれ」にポランティアクルーとして乗船しました。この日程と南の海のキーワードでピンときた人もいるんじゃないでしょうか。そう、皆既日食です。
 航海まっただ中の22日、屋久島と奄美大島に挟まれた地域で皆既日食が起こりました。あいにくとその日は日本のほとんどが曇りや雨のお天気でした。みなさんの住んでいる辺りでも日食を見ることができた人は少なかったのですないでしょうか。皆既日食を見るために南の島に出かけたもののスコールや雲に阻まれて全然見られなかった人たちのことなんかも報道されてましたね。さて、南の海に向かった「あこがれ」では皆既日食を見ることができたのでしょうか?日食の他にはどんなことがあった航海だったのでしょうか。
 それでは、太陽を追いかけた二週間の航海記、始まります。

 出航日16日の大阪、デッキでトレーニーの到着を待ちながら見上げた空は薄曇り。梅雨前線がまだまだ北に上がりきらずに天気はいまいちです。午後一時の乗船時間が迫ってくると、南港OZ岸壁に徐々にトレーニーさんたちが集まってきます。今回は30人のトレーニーさんが乗船予定ですが、出航日がまだ夏休み前ということで、高校生、大学生などの乗船者はなし。一番若い人でも30代で、平均年齢はなんと「あこがれ」史上最高の62歳というメンバー構成。そして毎年一度しかない二週間の長期航海なので「あこがれ」のヘビーリピーターのみなさまが何人も乗船予定です。
 デッキから岸壁を見渡せば、案の定見知った顔がちらほら・・。「あこがれ」では出航前に、スタッフがトレーニーさんから提出していただいた健康申告書をもとにそれぞれの健康状態をミーティングでチェックしています。今回は平均年齢が高いだけあっていろいろと健康不安を抱えた方も多かったのですが、「高血圧で薬を服用か・・」「それ、○○さんです」。「ひざが悪くてしゃがんだりする作業に問題が・・」「それ△△やん」。「腰痛があって・・」「いつもの□□さん」。申告書だけ見ているとかなり不安のある記述が多かったのですが、よく見るとそれはほとんど今までになんども航海を経験しているリピーターの方々。船の生活もよく知っているし、こっちも知っている人たち。問題があっても自分で対応できるし、つらければちゃんとこちらに報告してくれる人たちなので、スタッフとしては一気に気分が楽になりました。
 それとちょっとぴっくりしたのが食品アレルギーの申告がなかったこと。小学生や中学生が多い航海だと、たいていアレルギーの申告はかなりの人数になります。「そば」や「さば」、柑橘系などのフルーツなどが多い気がします。「あこがれ」は枕がそば殻なのでそばアレルギーの人が乗ってくると枕も取り替えたりと対応に追われることがよくあります。乗船者の世代によってこれだけ状況が変わるというのはかなり気になりますね。

 トレーニーが乗船してまずは乗船式。クルー、スタッフの紹介と船長タツさんから今回の航海のアウトラインが発表されます。それによると、まずは瀬戸内海経由で九州方面に向かい、3~4日かけて瀬戸内海を抜け、その後22日にトカラ列島付近を目指して皆既日食の観測を予定。その後は鹿児島県の志布志港に入港して水を補給した後、太平洋を大阪に戻るとのこと。ミーティングが終わると早速出航です。今夜は小豆島にアンカー予定。出航が午後なのでそれほど時間はありません。これから二週間暮らす船内の案内をして、帆船独特の用語の説明を行います。
「右舷、左舷」は「スターボード、ポート」、「食堂」が「メスルーム」、「ベッド」は「ボンク」、「トイレ」は「ヘッド」、トレーニーの「班」が「ワッチ」なんていうのが代表的なところです。
 その後、それぞれの荷物を整理してもらい、ボンクにシーツを敷いたりしてもらったり、さり気なく明石海峡大橋の下をくぐったりしているとあっという間に夕食です。夕食後は走る船のデッキの上で自己紹介。二週間一緒に暮らすメンバー同士の顔合わせです。今回は山形、東京、岐阜、岡山などなどいろいろなところからメンバーが集まっています。
やはり皆既日食に興味がある人がかなり多いみたいですが、日食よりも長い航海なのでエントリーした人もかなりの数いらっしゃいました。日食を見たい人も、ガンガン走りたい人もどちらも満足するような航海になることを祈りつつ本日は終了。

 二日目、17日も天気はいまいち。梅雨前線が本州北部に停滞中。午前中に瀬戸大橋を通過。瀬戸内海ということで海は穏やか、ということで午後からはマスト登りも予定していたのですが雨が強くなってきたので中止。そのかわり、セイルを張ったり畳んだりするときの号令や手順をみっちりとチェック。雨の中、カッパを着てデッキで実際にセイルを張るためのロープを使いながらの説明です。練習のために帆を上げたり下げたりもしてみました。さらに余った時間はロープワークや舵取り練習などで過ごしました。
 この日は瀬戸内の難所の一つ来島海峡を通過。最初は来島海峡手前の今治沖にアンカー予定でしたが、順調に船が進んだのと潮の加減がいいので、そのまま夕方に来島海峡を通過してからのアンカーになりました。来島海峡付近は戦国時代には有名な村上水軍の根拠地。デッキから辺りを見ていると、大小様々な島が込み合っていて船が通れそうな水路も限られています。その上に潮の流れも複雑ときては、海賊が活動するには絶好の条件なのがよく分かります。丁度、日が暮れかかる頃だったので、夕闇に沈む島々と島をまたいでその上を貫く橋がすごく神秘的に見えました。

 三日目、18日。梅雨前線は一気に北上ながらも天気はそこそこ。ただし、南風に変わったので蒸し暑い。この日は上陸日です。朝に今治沖から錨をあげて向かったのは周防大島。午前中は全員で上陸準備にかかります。今回は船を岸壁に横付けするのではなく沖合にアンカーしたままゴムボートでの上陸となるので、そのためのゴムボート組み立てや、上陸してからの昼食になるのでお昼ご飯用におにぎりを作りなどをみんなで手分けして進めます。
 昼頃から上陸開始。ボートでの上陸は手間も時間もかかりますが、いかにも帆船の航海、といったおもむきで結構楽しいものです。漁港の片隅に無事、上陸に成功。みんなで約2.5Km離れた竜崎温泉という日帰りの入浴施設目指して歩き始めました。周防大島は山口県東部の島で、淡路島、小豆島に次いで瀬戸内海で三番目に大きな島。周防大島というのは通称で正式名称は屋代島というそうです。本土とは橋でつながっているので交通の便はそれほどは悪くはなさそうですが、静かで何もない島でした。
 港を抜けて集落を通り過ぎて海沿いを歩きます。漁港から離れると海沿いには狭い砂浜が見えてきました。久々に長い距離を歩いている上に蒸し暑いので、海がやけに気持ち良さそうに見えます。みんなも同じ気持ちだったらしくて、口々に水着を持ってこなかったことを残念がっています。海はきれいだし、波は穏やかだし、砂浜はきれいだし、天気はいいしで、最高の海水浴日和だったのに・・。目的地の竜崎温泉はお風呂から海を眺めることもできて、なかなかいい温泉でした。 残念ながら沖合にアンカーしている「あこがれ」は岬の反対側になってしまったので見えませんでしたが。ゆっくり温泉につかって、ジュースやアイスクリームに舌鼓をうち、ゆっくりくつろいで船に戻りました。
 船に戻るともう夕食の時間。今日はこのまま周防大島にアンカーということで、セイルを触ることもないしマストに登ることもない、のんびりした一日となりました。

 四日目。19日です。世間様では日曜日らしいですが、すでに船の中では曜日を気にする人はいなくなってしまいました。梅雨前線は依然として韓国付近に。このままいけば日食の頃には南の海は太平洋高気圧圏内に入ってすっきり晴れるかもとちょっとだけ期待してみる。本日も夜はアンカー予定で目的地は大分県の国東半島、大分空港の沖合です。
 午前中は四日目にしてようやくマスト登りをすることができました。ドクターストップのかかっている一名を除いた全員がマスト登りを行いました。この日はセイルも3枚張って、ようやく「あこがれ」も帆船らしくなってきました。明日からは太平洋に出て夜も錨をいれずに航海する予定です。当然、セイルを張ったり畳んだりする作業も多くなるので、たくさんのトレーニーさんがマスト上での作業に参加できるのでラッキーです。また明日からはトレーニーさんに航海当直にも参加してもらう予定です。
 航海当直とはクルーと一緒に実際に船を動かしていくことです。舵取り、気象観測、見張り、海図への船の位置の記入(チャートワーク)などを、トレーニーがそれぞれのワッチ毎に時間を区切って交替で行っていくのです。ということで、午後からは当直に入るために必要なことのレクチャーと畳んだセイルをマストに固定するやり方や必要な結び方などの練習。いよいよ本格的な航海が迫ってきてちょっとわくわくした気持ちのまま、1日が過ぎ去っていきました。

 世の中では7月20日。月曜日で海の日の祝日だそうですが、船に乗っている感覚では単に航海が始まってから5日目です。朝起きると普通に雨。どうも梅雨前線が再び南下してきてしまったらしい。後で知ったのです九州、中国地方は大雨だった模様。船の周りはそこまでではなかったのですが。
 午前中は昨日に続いて入直のためのレクチャー。午後にはいよいよ関サバ関アジで有名な豊予海峡を越えて瀬戸内海とはおさらばです。揺れが激しくなることが予想されますので、揺れても飛び散ったりしないように荷物整理なども行います。午後からはセイルを張って夜の航海に備えます。一通りのレクチャーは終わっているので、マストに登っての作業はトレーニー中心で行います。なかなか手際がよく頼もしいです。しかしこの頃から海の雰囲気が明らかに変わってきました。瀬戸内海のおとなしい揺れから、外洋特有の大きくて複雑なうねりが始まって、船酔いでダウンする人も出てきました。
 夕方からはトレーニーによる航海当直開始。今日は初めてということで、各ワッチ二時間ずつとなりました。18時から20時、20時から22時、22時から0時、0時から2時の四つです。揺れが強くなってきたなかでの深夜の当直です。みなさん、がんばってください。ちなみにぶんごーは18時から20時までの当直にお手伝いで参加しました。まだまだ明るい時間帯だったし船酔いしている人も少なかったので、スムーズに終了することができました。疲れて眠くなったので、後は次の当直班に任せてさっさと寝ます。引き継いで当直に入った次のワッチは船酔いの人が多くて大変そうでしたが・・。