関東に2隻の帆船が寄港した2009年。開港150周年に沸く横浜では
一般公開に多くの人が詰めかけ、はるばる地球の反対側から訪れた両艦を
歓迎、堪能しました。
今月と来月の当「SF通信」では、この両艦の「バーチャル見学会」を掲載
します。見学なさった方も、ご都合合わず訪問叶わなかった方も、じっくり
ご覧下さい。
今月はまず、5月末に来日したメキシコの<クァウテモック>からスタート!


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横浜港新港埠頭に接岸、一般公開する<クァウテモック>。
セイルをぴっちりラッシングせず、カーテンのようにひらひらさせるのは
ラテンアメリカの船でよく見かける一般公開用の演出。


新型インフルエンザ流行のため、大阪寄港がキャンセルになったメキシコ海
軍の練習帆船<クァウテモック>(以下『ク号』)は、前倒しで5月27日
(水)横浜港新港埠頭に接岸。6月5日まで一般公開を行いました。

今回の航海は、とくに日本とメキシコの交流400年を記念し「JAPON 2009」
というタイトルをひっさげての訪日でしたが、この「交流400年」とは1609
年9月30日未明、ガレオン船<サン・フランシスコ>が千葉県の御宿沖で座
礁、多くの乗組員が遭難した史実に基づいています。
この出来事をきっかけに、日本とメキシコは修好関係を締結。御宿町とアカ
プルコ市は姉妹都市提携もむすんでおり、両国の友好関係は、現在にいたる
まで綿々と続いています。


艦内に飾られる、アステカ帝国最後の皇帝クァウテモックの胸像。


ところで、メキシコといえばアステカやマヤ文明が有名ですが、練習帆船の
<ク号>は、このアステカ帝国最後の皇帝クァウテモック(Cuauhtemoc)の
名前からとっています。意味はアステカの言葉で「急降下する鷲」という
意味。
クァウテモック皇帝はとても勇敢な青年で、黄金の在処をつきとめようとス
ペイン人達が彼を火あぶりの拷問にかけたのですが、とうとう最後まで白状
しませんでした。(最後はスペイン人によって絞首刑に処せられます)

これをモチーフにしたのが、<ク号>の艦首像です↓クァウテモック皇帝の
足下が炎にあぶられていますね?(熱そうです・・・)
最終的にはスペインの植民地にされてしまったアステカ帝国(メキシコ)で
はありますが、拷問に耐え国を守ったクァウテモック皇帝は、今でも
メキシコの人々にとって英雄なのです。


<ク号>の艦首像。足下をメラメラとあぶる炎に注目!


では、艦内に入ってみましょう。スペイン語で「こんにちは!」は「オラ!」
「ブエナス・タルデス」(午後のみ)ですが、簡単なほうの「オラ!」で十分です。
ぜひ乗艦するときは、舷門でにっこり笑って挨拶を!!彼らもとびきりの笑顔で
迎えてくれるはず。

ブリッジは前回、東京の晴海埠頭で見学した時よりも電子機器が増え、若干
グレードアップしているような印象。日本製の航海機器も大活躍しています。
艦尾のサロンに続くメインデッキ通路両脇には、各寄港地でもらった記念の
プラーク(楯)がびっしり。83年、97年に大阪港から寄贈されたプラークも
ちゃんと飾ってあるのが嬉しいですね。

 
<ク号>のブリッジ。日本製品が大活躍☆
 
「OSAKA WORLD SAIL'83」「SAIL OSAKA'97」で、大阪港から寄贈された
プラーク(二つとも)。


ステンドグラスが美しい***艦尾のサロン


そして左舷側には、士官用のメスルーム(食堂)。この部屋は儀礼刀などが
置いてある「プラサ・デ・アルマス」という、いわば艦内に下りる時の玄関
先のような場所に面しています。ふと見ると、柱の根本のベンチに、士官の
帽子がズラー。
なんでこんなところに?と聞くと、当直中の士官たちがメスルームに入る時、
ここに帽子を置いて、在室中の印にしているのだとか。なるほど。

ちょっと目をひいたのが、通路の脇に並んだ木製の「バケツ」。艦内のあち
こち同様ピカピカに磨かれていますが、なんと毎日の作業に使う「現役」の
掃除道具とのこと。
私もあちこちの船を見ましたが、バケツをインテリアに使っている帆船は
珍しいかも?ちなみに外のデッキにも同じ形のバケツが置いてあり
こちらはさすがにニスもはげて、使い込まれた雰囲気でした。

 
左:磨きたてられた調度品がまぶしいっ***士官食堂。
右:「休憩中」のサイン。並んだ士官帽。

 
左:インテリア兼作業用バケツ!
右:イケメンは何を持たせても似合います*案内役のアブラハム君。


今回の航海では、韓国海軍の女性士官が横浜まで便乗したそうですが、
そういった、外国からの女性招聘士官が使うキャビンがここ!↓
とても練習帆船のキャビンとは思えない、ぜいたくな作り。ベッド(『ボン
ク:寝台』じゃありません!)はダブルサイズ、かわいい(過ぎる)刺繍の
はいったベッドスプレッド。

隣には専用のシャワールームもついており、これがまた扉に熱帯魚の
ステッカーなんか貼っちゃって・・・はぁ、ホテルかここは(笑)。

 
左:女性客大歓迎***な姿勢が見える?豪華なインテリア
右:おさかなのステッカー、誰の発案か知りたいものです。


その他の艦内をさらっと見てまわりましょう。エンジンルーム、医務室、
ギャレー(調理場)は、こんな感じ↓

  
左上:<ク号>の心臓、エンジンルーム。
右上:あんまり病気になる人がいなくてヒマそうな医務室。
左下:夜のレセプション用の食事を作るクルーたち。


さて、<ク号>は横浜での一般公開を終えたあと、東京の晴海埠頭にシフト。
ここでも歓迎レセプションなどがありましたが、残念ながら近年厳しくなっ
たセキュリティレベルのため、一般公開はなし。
早朝、タンツー(清掃)の時間にお邪魔してみました。

   
左上:晴海接岸後、入港歓迎式典でスピーチをする艦長のゴンサレス大佐。
   メキシコ海軍のHPに載っていた写真の口ひげは?と質問すると、
   「中国に寄港したとき剃っちゃったよ」とのこと。
右上:真鍮みがきは毎日の日課。手間ですが、ステンレスでは味気ないし
   これも訓練のうち。
左下:なんと左舷でうつむいている男性は、居眠り中!シャッターを押した
   直後にほうきでどつかれていました。あちゃ~;;
右下:真鍮の多い<ク号>ですが、反面、シュラウド(横静索)はむき出し
   のステンレス。滑りやすいので、登るときは革製の指なし手袋を着用
   します。借りて一番上まで登ってみましたが、なるほど雨の日、素手では
   滑って危ないだろうな、と実感。
   
   
6月11日午後2時。<ク号>は次の寄港地、千葉県御宿町に向かって出港。
事前に、SFボラチームが活動しているお台場「船の科学館」にお願いして
いたところ、やってくれました☆☆「安全な航海を祈る」を意味する、信号
旗の「U」「W」と「お別れ」「感謝」を意味する長音三声(『ボー、ボー、ボー』
と三回鳴らす汽笛)を。
羽田に向かって航路を進む<ク号>も、すかさずそれに答えて「ボー、ボー、
ボー」。思わずジーン・・・。有り難うございました!<船館の皆様

 
左:晴海埠頭を離岸、東京湾の出口に向かう<ク号>
右:UW旗をあげ、長音三声を鳴らす「船館」。じつは「船館」前の公園は
  絶好のship-watching pointなのです♪


今月1日、<ク号>は無事にメキシコの母港、アカプルコに到着。大統領の
カルデロン氏も出迎え、長期に渡る訓練航海を慰労しました。
また近い将来、ぜひ来日してくれるといいですね。
その時まで Hasta la vista!(また会う日まで)


裂お知らせ裂

<ク号>寄港地、千葉県御宿町の歴史景観をモチーフにしたオリジナル
フレーム切手「2009御宿」がこのたび発売されました。
デザインは、
*サン・フランシスコ号漂着地の田尻海岸
*6月に来航したメキシコ帆船<クァウテモック>
*月の沙漠記念像
*まちかどつるし雛(ひな)めぐり
の10点。

1000部限定で、80円切手10枚のシートが1200円。
販売窓口は、千葉県勝浦市やいすみ市などの18郵便局。販売期間は
10月30日までとのこと。
詳しくは日本郵政グループのサイトで☆