東京お台場の「船の科学館」などで活動している SaltyFriendsボラン
ティアチームの Ginga さんより、東北地方の船の博物館を訪れたレポー
トを寄せていただきました。

まず今号では「青森編」と題して日本最大級の数の船を保存展示してい
る「みちのく北方漁船博物館」と、帆船ではありませんが貴重な保存船
である青函連絡船<八甲田丸>のレポートを、博物館スタッフの方々か
らいただいた読者宛メッセージと共にお届けします。

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その1:みちのく北方漁船博物館


みちのく北方漁船博物館

4月上旬に青森の「みちのく北方漁船博物館」を見学して来ました。
青森駅やフェリーターミナルからも近く、船の好きな人には楽しめる施
設です。
http://mtwbm.com/
津軽地方の木造漁船の保存収集から始まった博物館ですが、地元の小型
漁船にとどまらず、日本の他地域の船や海外の船の収集もあります。特
に、航海できる大型船を持っているのは凄い。冬の間は造船所でメンテ
ナンスのため訪問日(2009年4月上旬)にはそれらの姿は見ること
が出来ませんでしたが、復元北前船・<みちのく丸>、ジャンクは4月
下旬から11月上旬まで係留展示され、ジャンクは船内の見学が出来る
とのことです。

 今年で設立10年目をむかえ、いろいろなイベントが催されます。
そのうち、所有する大型帆船を使っての主なイベントは次の通りです。

 ジャンク体験航海:8/1,2
 <みちのく丸>見学会:9/1-11/3の土・日
 <みちのく丸>帆走見学(陸上から):9/13,27(予定)
 <みちのく丸>操帆体験:9/12,26(予定)
 <みちのく丸>体験航海:9/13,27(予定)

4月時点での予定ですので、詳細は博物館にご確認ください

博物館の展示内容:

・展示室は巨大な体育館のように天井が高い1層の建物で広々としてお
り、大きな窓で館内は明るい。

広々とした館内

・津軽地方の小型船には、浅い丸木舟状の船底の上に舷側の板をつける
という、丸木舟から大型船へと発展していく途中の形態をとどめている
様式の船が残っている。この“浅い丸木舟状の部材”を地元では“ムダ
マ”と呼んでおり、この様式を“ムダマハギ”と呼んでいます。ムダマ
は1材のもの、2材、3材のものなど“ムダマハギ”と呼ぶ様式でも大
きさや船底の形にバリエーションがありました。
 このほか、さらに発展した様式の船(シマイハギ)など多数の船が展
示されています。


ムダマハギ漁船

・館内には小型漁船が数十隻展示されているほか、木造イカ釣り船、ベ
ニスのゴンドラ、ベトナム水上生活者の船、タイバンコクの運河を走る
船、ベトナムの網舟、インドネシアの帆走アウトリガカヌー、バイカル
湖の漁船、佐野造船所の木造帆走カヌー、アイヌの船(復元船)など、
ところ狭しと並んでいます。


様々な漁船

 ここは館内が明るく、説明の文字が大きいので説明が読みやすい。ま
た小型漁船の説明には様式・収集地のほか、建造時期と当時の価格が記
されているのも、この博物館の工夫のようです。
 船体以外に、航海機器、漁労用具、推進装置(オールから蒸気レシプ
ロエンジンまで)など多数展示されています。
・観覧者が触れて体験できる物がいろいろありました。
    (1)シップベル 各種5個。鳴らせる
    (2)ロープワーク体験。説明図を見ながら自分でやってみる
    (3)ベニスのゴンドラは船内に乗れる
    (4)霧笛を鳴らすことが出来る
 木で船の模型を作るコーナでは、カットされた木を組み合わせて船を
作り好きな色を塗って楽しむことが出来るようになっています。親子連
れには好評でしょう。(開催日は博物館に問い合わせください)。この
ほか、手漕ぎ船体験なども。
・屋外には古代バイキング船の復元船の展示があり、この船は船上に乗
ることが出来ます。
・展示場のほかに、地上30mの展望台があり、周囲を一望できます。
西方向のフェリーターミナルにナッチャンが係留されていました。
・訪問した日には学芸員の石山さんが居られて、いろいろ説明を聞くこ
とが出来ました。

体験ロープワーク

アクセス:
・青森駅「西口」から約2km。タクシーで640円。
 バスは1日数便程度しかないうえ、バス停から10分くらい歩きます。
タクシー利用がお勧めです。道路側には「船の博物館」と大きく書かれ
ており、地元ではこの名前の方が通りやすいようです。

その他:
・訪問日は10周年記念キャンペーン期間中とのことで、ダウ船の写真
集をいただけた。無くなり次第終了との事です。
・ムダマハギ船の作成や操縦の様子はこの博物館からの出版物がありま
す。本とCD(船大工さんが作業中の様子の録画)のセットです。
・博物館に近づくと、帆桁を備えた横帆船のマストが3本見える。これ
は近くの自動車販売店の屋上に立っているもので、日本丸の帆装をイメー
ジしたものだそうです。
・この日は上野からの夜行列車で朝10時頃に青森駅に着き、この博物
館を見学。その後三内丸山遺跡を見学してから青森に戻り、夕方に<八
甲田丸見学、という一日でした。

学芸員石山晃子さんからメルマガ読者へメッセージをいただきました:

   「国内最大級の復元北前船<みちのく丸>は、2008
    年NHK大河ドラマ「篤姫」にも御座船として登場し
    ました。特別展「北前船復元=みちのく丸建造と帆走
    の記録=」(9月1日~11月3日)期間中は、<み
    ちのく丸>の一般公開などのイベントを開催いたしま
    すので、ご興味のある方は、この機会に是非、青森へ
    足をお運びください。」



その2:八甲田丸


八甲田丸船尾より

青函連絡船の<八甲田丸>が青森に係留され、「メモリアルシップ八甲
田丸」として公開されています。
http://www7.ocn.ne.jp/~hakkouda/hakoindex.html
青森駅から近く、船や鉄道の好きな人には楽しめる施設です。
青函連絡船は他に、羊蹄丸(東京・船の科学館)、摩周丸(函館)が公開
されて
いますが、現役時代の設備を最も多く見ることが出来るのが<八甲田丸>
です。

展示内容:
・現存する連絡船3隻の中では、唯一車両甲板が公開され、レール・車
止めのほか当時使用していた国鉄車両が展示されている。特に、控車
(重い機関車が浮き桟橋部分に乗らないように、機関車と貨車の間に挟
んで使った車)が保存されているのは貴重です。船尾部分ではレールが
3線になる部分も残されています。

車両甲板

・エンジンルームもそのまま残っていて、上から見ることが出来る。

主機関 4台で1軸を駆動

・20分コース、40分コースと二つの見学コースを用意し、色分けさ
れた床の線をたどっていくとそのコースに従った見学が出来るようになっ
ており、時間を気にする旅行者には便利です。
・週末には大人向けのクイズがあり、何か記念品がもらえるようです。
・船内には青函連絡船の歴史や各種資料が多数展示されており、当時の
設備のほか、青函連絡船の歴史など、さまざまな展示物がありました。
・煙突内に階段が設けられ、煙突頂部が展望台になっている。ここから
周囲360度の景色を眺めることが出来ます。開館時間が19時までと
長いので夕暮れの景色を眺めることが出来ました。

煙突の上の展望台

アクセス:
青森駅「東口」から徒歩5分
入館は9時~18時まで。開館時間は19時まで

その他:
・他所では見られない車両甲板中心に見てきました。車両甲板と煙突展
望台からの眺めで時間を取ってしまい、操舵室、無線室などは見る時間
が無くなってしまった。
操舵室・無線室はこの後、函館の摩周丸で見学してきました。
・元機関長を含む3人の方がボランティアとして参加しているそうです。

八甲田丸スタッフ猪股美有稀さんからメルマガ読者にメッセージをいた
だきました:

   「こんにちは。青函連絡船メモリアルシップ<八甲田丸>
    スタッフの猪股です。船を愛する方、鉄道ファン、さま
    ざまな方が来船するこのメモリアルシップに勤務し、7
    年目を迎えました。私は昭和62年…そう、連絡船が廃
    止になる前の年に修学旅行で乗船しており、最後の世代
    の人間として来船されるお客様とコミュニケーションを
    取っています。

    自分がまさかこのような貴重な船の中で働くとは考えて
    もいなかったので、とても誇りに思っています。乗船さ
    れていた方や乗組員など、もう20年以上の時が進み懐
    かしさなどから涙ぐむ姿や楽しかった事を私たちに受け
    継いで帰られます。そんなたくさんの方の思いをずっと
    残していく為にも、スタッフ一丸となり頑張ります。現
    在3隻の連絡船が係留保存されていますが、それぞれ持
    ち味があります。
     
    この八甲田丸の最大の見所は他の2隻にはない、車両甲
    板です。この車両甲板は当時一般乗船客が見ることの出
    来ないスペースで、現在9両の鉄道車両が搭載されてい
    ます。中でも貴重とされているのが郵便車とキハ82系
    です。その他にもほとんど改装されていない原型の姿が
    たくさんあります。そんな連絡船を多くの方に知ってい
    ただきたくイベントも開催しており、間近では7月の港
    フェスタです。毎年楽しい内容を考え、参加して頂いて
    おります。どうぞ、青森へお越しの際は駅から近い<八
    甲田丸>へお越しください!」


「みちのく北方漁船博物館」学芸員の石山さん、<八甲田丸>スタッフ
の猪股さん、どうもありがとうございました。

次回は北海道に渡り、江差の<開陽丸>などを紹介していただく
予定です。お楽しみに!