2009年04月10日

■□ 北米東海岸・海事博物館レポート 〜その3〜 □■ ニューベッドフォード捕鯨博物館

クジラと巨大帆船模型で知られるミュージアムがある、ニューイングラ
ンドの古い港町を訪れた。おもに19世紀、捕鯨で栄えたマサチューセッ
ツ州ニューベッドフォード。その地理的要因から、ペリー総督が日本に
向けて出航した港町ニューポートや、近隣のナンタケット島と並ぶ三大
捕鯨拠点の一つだった。

すでに捕鯨産業も衰退期にあった1907年、町の歴史を記録に残そうと立
ち上がった一人の地元新聞記者の呼びかけで建造されたのが、ニュー
ベッドフォード捕鯨博物館だ。現在は国立歴史公園の一施設として、国
立公園局が管理している。博物館が誇る幾つかの「世界一」を確かめよ
うと、人もまばらな館内を歩き回った。

MuseumFront.jpg Entrance.jpg
石畳の道が歴史を感じさせる。

二層吹き抜けの開放的なエントランスホールに踏み入ると、ワイヤーで
吊るされたシロナガスクジラとザトウクジラのスケルトンが来館者を迎え
てくれる。一瞬まるでどこかの「大恐竜展」に迷い込んだかような錯覚
に陥るほどデカイ。絶滅危惧種のシロナガスクジラにおいて、世界でも
展示されているのはここを含め3体しかないらしい。このスケルトンを横
目に階段を上ると、展示パネルや映像クリップを通して鯨の種類や、
まだ謎の多いその生体について詳しく学ぶことができる。全米でもクジ
ラに特化した博物館として最大で、2階に所蔵するもう一体は他の展示
物を壁際に追いやるように横たわり、空間を独占していた。

EntranceHall.jpg WhaleBones.jpg
(左)シロナガスクジラのスケルトン。エントランスホールまでなら無料で入る
ことができる。
(右)クジラの骨。木の根かオブジェのようにもみえる。


Skelton1.jpg Skelton2.jpg

歩を進めると、展示はクジラそのものから主に捕鯨へと移ってゆき、町
とのかかわりから造船、捕鯨方法、船上生活、そして海洋画などのアー
トへ続いていく。ある写真には、港には停泊する捕鯨船のおびただしい
数のマストが連なり、その空をも埋め尽くすようだ。さすが、当時この地
域だけで全米の約3分の1、300隻以上を数えたともいわれる捕鯨船の
母港だったことが頷ける。

SpermOilProducts.jpg
鯨油商品の数々。

ところで、もしニューベッドフォードと聞いて日本との繋がりにピンと
来る人がいたなら、幕末の日本史にかなり詳しい人だろう。というのも
1841年、このニューベッドフォード港を出航したホイットフィールド船
長率いる捕鯨帆船<ジョン・ハラウンド>号が、はるか離れた太平洋の
鳥島近くにアンカーを打ち、食用にするウミガメを探していた船員が島に
漂着して助けを求めていた日本人漁師5人を救助するのだが、この中に
14歳の少年ジョン万治郎がいた。勤勉で頭のよい万次郎少年をいたく気
に入った船長は、彼を本土に連れ帰り養子にして学校に通わせたという
話は、学校の歴史の授業で習った記憶がある人も多いに違いない。帰国
後の彼が日本の開国&その後に大きく寄与したことは現在よく知られる
ところだ。

Display1.jpg Display2.jpg
Display3.jpg
館内展示の様子

万次郎が過ごしたホイットフィールド船長の家や通った学校は、川を隔
てた隣町フェアヘブンに現存している。船長の家は近年、保存運動が起
こるも資金不足で計画が頓挫したり一度始まった補修工事も中断。数年
前には最終的にオークションにかけられることになり、それを知った著
名な日本人医師の音頭で募金集めが行なわれて買取りが実現。修理も
一気に進み、完了後は発足した地元の保存管理団体に寄贈されること
のことで、近々一般に公開される予定だ。

ニューベッドフォードとフェアヘブンは万次郎の故郷、高知の土佐清水
市と友好都市関係にあり相互交流も盛ん。両市ともボストンから車で1
時間半程と近いので、博物館と一緒に是非一度は訪れておきたい。

SeaChest.jpg SeaChest_inside.jpg
北極圏での捕鯨に従事していたBuijs船長のシーチェスト。1759年とある。

話は随分それてしまったが、捕鯨に関連して有名なのがスクリムショー
だ。スクリムショーとは、捕鯨船員が主にクジラの歯や骨を加工して
作った装飾品や実用品のことをいう。西欧で捕鯨の目的は主にその鯨
油が目的であり、それがろうそくの原料や灯火用の燃料などに使われ
た。肉は食さず廃棄されたが、船員が航海中の暇を利用して加工しや
すいその歯や骨を彫るなどして絵を描き、アクセサリーなどにしたのだ。

Scrimshaw1.jpg Scrimshaw2.jpg Scrimshaw3.jpg
ついつい見とれてしまう。ひとつ欲しいなぁ…。 

このスクリムショー、多くの海系博物館には必ずと言ってよいほどある
ものだが、ここはその種類や展示数において群を抜いている。事実、
3,000点にのぼるスクリムショーを所蔵しているそうで、これは世界一。
後から知ったことだが、所蔵数では及ばないもののもう一つ世界一を
誇るものがあり、それがログブック(※ただしWikipediaによればこれは
捕鯨航海で記録された手書きのものという条件らしい)。おもに別館の
資料図書館に収蔵されている。

そしてもう一つの目玉が、<ラゴダ・オブ・ニューベッドフォーフォード>
と呼ばれる当時活躍した捕鯨船の「模型」。模型と言うも、縮尺がなん
と2分の1。ともするとレプリカ?と思うほどの大きさだが、あくまで模型
なのだ。もちろん、触ってもOK。実際に船上に乗って遊べるところが楽
しい。館内にはこの巨大模型の他にも船首楼のレプリカがあり、こちら
も子供に人気だ。子供向けでは他にクイズやペーパークラフトなども用
意されていて、決して大きくはないが子供から大人まで楽しめる博物館
になっている。

LagodaBow.jpg LagodaMast.jpg LagodaStern.jpg

LagodaBowsprit.jpg LagodaBow2.jpg

LagodaDeck2.jpg LagodaDeck.jpg
<ラゴダ・オブ・ニューベッドフォード>の1/2模型。世界最大の帆船模型だそうだ。

LagodaPort.jpg ShipModels.jpg
>(右)こちらには見慣れたサイズの模型が並ぶ。

Lagoda_LookingDown2.jpg Lagoda_LookingDown.jpg
上から見下ろしてみる。…やはり模型なのか・・・。

WhaleBoat1.jpg WhaleBoat2.jpg
Harpoon.jpg
本船に積まれたこのホエールボートを下ろして乗り込み、クジラの近くまで寄って
写真(下)のような「もり」をうち込んだ。鯨が下から現れたり、尾びれでたたかれ
たりしたらひとたまりもなく船は粉々に。とても危険な作業だった。


ForecastleReplica.jpg ForecastleReplica2.jpg
館内には船首楼のレプリカも。

NB_Harbor.jpg Fairhaven_inDistance.jpg
(左)2Fテラスから眺めたニューベッドフォードハーバー。
(右)アクシュネット川の向こうが隣町フェアへブン


全て見終わって1階へ下りたところにあるミュージアムショップは、他の
博物館によくあるありきたりな商品はあまり見当たらず、オリジナル商
品やつい手にとって見たくなるものも多い。時間があったら、見学つい
でに是非立ち寄りたい。

最終のレポートとなる次回は北米最大の海事系博物館、ミスティック・
シーポート・ミュージアムを訪れます。


ニューベッドフォード捕鯨博物館
New Bedford Whaling Museum


(カズー)
posted by SaltyFriends通信 at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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