<自動船舶識別装置 受信イメージ>

自動船舶識別装置(以下、AIS)というシステムについて、ご存知でしょうか?
上図のようなイメージで、船舶がどういう船で、どの方向に走っているか、などの
情報が簡単に確認できるシステムです。

元々は、大型船の衝突予防などの目的で考えられたシステムであり、
一般ユーザが手にすることは少ない機械なのですが、今回は
市販されている機材で試してみたいと思います。

まずは、システムについて知識を得たいと思います。
このシステムを使っている船舶は、自分の位置情報を船舶用のVHF帯の
電波を用い送信しています。
送信された多数の船の情報を受信すれば、最初のイメージのような
表示が可能となるわけです。

送信するデータは、デジタル化された情報であり、位置情報のみならず、
識別コード、船名、目的地、搭載物などのデータ領域もあります。

下のAIS概略を確認ください。


<AIS概略>

船舶Aがレーダのレンジ外にいても電波が届く範囲であれば、
船舶Bは運航を確認することができます。
また、船舶Aの正しい船名、目的地、積載物などの情報も登録(※)されていれば
確認することができます。
(※船舶A側にて正しい情報をインプットしておく必要がある)
AISを搭載することにより、もう一つの目を持つことが可能となり
衝突事故の可能性を減らすことができます。
また、レーダで捉えられない「情報」を取得できるシステムともいえます。
陸上側でも、AISからの情報を利用し、接岸時の運用などに利用しているようです。
多くのタグボートが搭載し、連携のとれた運航をサポートしているようです。

AISの搭載義務の発生する船は以下の通りです。
・300トン以上の外航船
・500トン以上の内航船
(残念ながら、帆船「あこがれ」には搭載されていないようです)

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では、実際に受信してみましょう。

受信に必要な機器は、多少専門的な機械も多いですが
秋葉原などに行けば買える機器です。

まず、下の機器構成図を確認ください。


<機器構成図>

船舶から送信されているVHF電波を受信するために、
アンテナと受信機(広帯域受信機)を用います。
また、パケット情報をデコードするために、パソコン
には専用のソフトウェアをインストールします。

今回、揃えた機械やソフトウェアは以下の通り。
・広帯域受信機 ICOM IC-PCR2500
http://www.icom.co.jp/products/amateur/products/receiver/ic-r2500_pcr2500/index.html
・アンテナ COMET DS-3000
http://www.comet-ant.co.jp/products/mobile/05.html
・パソコン WindowsXP搭載ノートパソコン
・ShipPlotter(21日間の体験が可能なシェアウェアです。パーソナル版25ユーロ)
http://www.coaa.co.uk/shipplotter.htm
・接続ケーブルはミニジャック(3.5)のオーディオケーブル

受信した場所は横浜です。
港からも近いため、電波を受信するロケーションとしては
問題ありませんでした。
また、ShipPlotterについては、体験版ではなく、ユーザ登録を行なった
状態で確認を行ないました。

AISで利用されている電波は、大きく2種類に分かれます。

1.東京湾で利用される周波数(その他地域でも利用されている)
・161.575MHz
・161.875MHz

2.公海上で利用される周波数
・161.975MHz
・162.025MHz

東京湾近郊では、1.を受信すれば問題ないと思います。

今回は、東京湾で利用されている161.575MHzにて確認を行ないました。
以下に受信イメージを示します。


<受信イメージ>

このように地図上に船のマークが表示され、どのような船が運航しているかを
リアルタイムに確認することができます。

受信画面をみていると、思わず港まで船を見にいきたくなりますね。

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受信に際しての注意点やテクニックを紹介します。

この記事を書くために参考にしたのは「ラジオライフ」という雑誌。
2008年11月号に詳しいやり方が載っており参考にしました。
http://www.radiolife.com/RL-Online/articles/RLlist2008/rl0811.html

・アンテナの性能について
今回、用いたアンテナは広帯域の受信を行なう万能型のものです。
そのため、VHF帯の電波に特化したものよりは、性能が劣っています。
あまり遠くの船舶の受信は行なえませんでした。
VHF帯専用のアンテナというものも多く販売されていますので、
そちらを選択するほうがよいでしょう。

・広帯域受信機の機能について
パケット出力できる機械でないと、実施不可です。
あまり多くの機種は市販されてはいないようです。

・受信が行なえているか確認する方法
電波で出力されているAISの情報ですが、データ通信のため、受信機からの音は
ノイズとしてしか聞こえてきません。
該当周波数にセッティングし、スピーカからの音を聞いていると、ガッと短いノイズが
入ります。
音声の受信と異なり、明らかに受信できたという確証は、パソコンでデコードしてみるまで
わからないところが難点です。
現ロケーションで受信できるのか、このアンテナでOKなのか?を簡単に確認するには
船舶が用いているVHF帯の音声の電波を受信してみるとわかりやすいです。
CH16というと、ピンと来る方も多いと思いますが、周波数156.8MHz(音声による通信FMモード)を
受信可能かである程度の判別が可能です。

・パケット情報をパソコンに入力する方法
パソコンと受信機の接続も問題が起こる場合があるようです。
パケット出力された信号をマイク端子に接続した場合、PC内でオーディオとして処理されます。
そのため、出力情報に一部変化が発生し、ShipPlotterへと入力されてしまうわけです。
ただ、この部分は、パソコンのハードウェアの設計によります。
なかには問題なく接続が行なえるマイク端子もあります。
また、ライン入力端子が搭載されているパソコンの場合、そちらに接続することで、
音質の変化を防ぐことが可能です。

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ここからは、ShipPlotterの登録ユーザのみの機能紹介になりますが。。。
どうやら、体験版では使えない機能のようです。
(ユーザ登録してしまったため、体験版での確認はとれていません。すみません。)

ShipPlotterには、「Share」というボタンがツールバーにありますが、
他の方が受信した情報がサーバにアップロードされており、ネット経由で
AIS情報を共有できる機能です。
この機能を用いると、受信機なしでAISの情報を表示することも可能です。
ただし、現在のところ東京湾の情報(東京湾で利用されている方が多い?)が中心のようです。

ここからは、ShipPlotterの受信機なしでの表示方法を説明します。
インストールは完了している状態としてください。
ShipPlotterを立ち上げます。
「File」より「Open new chart」を選択し、「grobe.jpg」を選択します。
次に、ツールバーの「Share」ボタンをクリックします。
(青地に白い斜めの矢印が上下に2本のもの)
すると、世界地図上に赤い点が表示されました。
見たい地域の部分を拡大(ツールバーのプラスアイコン)し、
ある程度、目的の範囲が選べたら、ツールバー「Satellite」(地球のアイコン)
をクリックします。
衛星写真が取得され、船舶の位置情報が表示されるようになります。

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最後に注意点。
システムの仕組みとしていえることですが、AISとは他の船の機器が計測した情報を
受信して、表示しているシステムです。
もしも、他の船のGPSが異常であった場合には、位置情報も間違いとなります。
また、全ての船がAISの電波を出力してはいません。軍艦などはまず搭載しないと思います。
たとえ、搭載義務のある船でも船長判断で電波を切っていても問題は無いようです。

複雑なシステムですので、実際の利用においても欠点を把握して用いてください。

なお、AISの不正な情報については、海上保安庁などでも調査を行なっているようです。
http://www6.kaiho.mlit.go.jp/kanmon/toukei/AIS.htm

ヨットでの活用例はこちらのサイトが詳しいです。
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0607/05/news095.html

いつもに増して、マニアックな記事となってしまいました。
ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください。

(みっきー)