2008年10月08日

■□ 船長の見たペリー艦隊 ☆その2☆ By大河原明徳さん □■

先月のSF通信で、ペリー艦隊は日本人を大砲で脅かすために、艦
隊の全船を横向きにしたと述べました。そして、錨にかかってい
る船は普通、風や潮が来る方向に船首を向けている筈なのに、ど
のようにして風に横向きにしていたのだろう? というのが宿題
でした。

その回答ですが、船長として次のような方法があると考えました。

(1)エンジンを極スロー前進、風上舵(舵柄・チラーを風上に
   する、舵輪・ホイールなら風下にまわす)を適当に使って
   船を横にする。 
   前進し過ぎ、錨索が後方に張ってきたときは、極スロー後
   進、風下舵(舵柄・チラーは風下に、舵輪・ホイールは風
   上にまわす)を適当に繰り返し使う。

この方法は、現代のエンジン付の船ならできますが、帆船では不
可能です。ペリー艦隊9隻のうち、機関付は3隻だけで、それも外
輪車船なので、排出流のすぐ後ろに舵板があるプロペラ船のよう
な舵ききは期待できなかったと思われます。

(2)帆を使って船を風に横にする。
   帆船では、船首のジブに風を入れると、船首は風下に向か
   います。また、船尾側のスパンカーに風を入れると、船首
   は切りあがり、風上に向きます。これに他の一部の帆に裏
   風をいれて「ゆき足」をおさえるライ・ツー、あるいは
   ヒーブ・ツーという操船をすれば、船は風に横になります。
   
しかし船は全体として風下に流れてしまい、港内のような狭い場
所では危険になります。ハイネの絵をよく見みても、帆を開いて
いる船はいません。

taiho01.jpg
横浜中華街に現存する、ペリー艦隊ゆかりの大砲。
佐久間象山が、この地に埋めたとされています。

   
(3)ボートを使って船尾を風上に引く。
   現代ならば、機関付きタグボートを雇って、船尾を風上に
   引くところです。帆船時代でも、大型帆船を狭い港内や川
   の中で操船するには、手漕ぎのボートを使っています。ペ
   リーの時代でも、この方法が最も簡単に実行できそうです。
   
ただし、この日には沢山のボートが将兵の上陸に使われています。
それで当時の船の艦載ボート数を調べてみましたら、どの船も
5〜6隻以上積んでおり、将兵も大きい船では、1隻に200人か
ら300人も乗り組んでいたようなので、横引きボートを使うこと
はできたでしょう。

ハイネの絵にその横引きボートが描かれていないか、拡大鏡を
使って見たのですが、ボートは横向きになっている船の反対側に
いるためか見えません。
なおこの方法では、船を横向きにしている間、ずうっとボートと
こぎ手が必要になります。

(4)ケッジ・アンカー(Kedge Anchor)を使う。
   大きい船では、通常使う船首錨のほかに、持ち運びやすい
   小型のケッジ・アンカーを持っています。船が座礁した時
   などにボートに積んで運び、船を引き出すなどに使います。
   運ぶときは、錨索をつけたケッジ・アンカーをボートのト
   ランサムなどにくくりつけ、投錨位置に達したところで
   くくりつけていたロープを切って落とします。
   大きいケッジ・アンカーでストリーム・アンカー(Stream
   Anchor)とよばれるものもあります。
   
(5)ワーピング(Warping)。 
   「ホーンブロワー」や「トマス・キッド」など、帆装軍艦
   の物語を読んでいると時々出てくる操船方法です。
   ワープ(Warp)とよばれる強いロープを、船尾コーターか
   ら船首の錨索の途中や船横のブイにとり、それをキャプス
   タンで捲きしめて、船体を風に横向けにします。
   帆船を、追い風でない場合に狭い港口から出帆させるとき
   などに使った特殊な操船方法です。

ペリー艦隊は以上のうちのいずれかの方法で、船を風に対して
横向きにしたに違いありませんが、ペリーの報告書には、それに
ついての記述はありません。正解は皆様各人で想像してください。
次号では「海図と測深」、初めて江戸湾に大きな船を入れた
ペリーがどうやって地形を知り、海の深さを測って入ってきたか
をとりあげてみます。
               Capt.大河原
posted by SaltyFriends通信 at 02:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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