2005年12月10日

◆ 世界のフネB スピリット・オブ・バミューダ by カズー ◆

10月のプライド・オブ・ボルチモアに始まった帆船を紹介するこの
コラム、先月の「ペリーの船」につづいては、帆船の建造ラッシュが
続く米国からのレポートをお伝えします。

今回の旅で訪れたのは、大西洋に浮かぶ孤島、英国領バミューダのセ
イルトレーニング船として現地の団体が建造中の<スピリット・オブ
・バミューダ>という帆船。4月の完成を控え、着々と工事が進む東
海岸最北のメイン州へ、足をのばして来ました。

この船の建造を受注しているのは、ペノブスコット湾に面した小さな
港町、ロックポートにある造船所「ロックポート・マリーン」。
2001年7月に進水、現在カリフォルニアで活躍している復元帆船の
<リンクス>もここで初声を上げるなど、木造船(主にヨット)の建
造で知られる造船所です。

それまでの滞在先、マサチューセッツ州ケープコッドから、ボストン
経由で車を走らせること約4時間半。11月初旬にしては暖かいもの
の、海からの風は冷たく日も暮れかけた頃、目印の真っ赤な建物に到
着しました。

SOB_4.jpg
ワインレッドのロックポート・マリーン
周りに馴染みながらも目立ちます



人気も少なくなった事務所で出迎えてくれたのは、この帆船の初代
キャプテンとなるクリス・ブレイク船長。これまで彼は、英国をはじ
め世界各国でセイルトレーニング事業に尽力、90年代初めには日本で
も帆船<海星>のセイリングマスターを務めていたことから、ご存じ
の読者も多いかもしれません。実はここを訪れることになったのも、
きっかけは久々に参加した、米国セイルトレーニング協会のコンファ
レンス。彼との思いがけない再会からの展開でした。

急速に陽が落ちていく中、事務所の裏口から階段を降り、案内された
棟の中へ。足を一歩踏み込むと、まず目に飛び込んできたのがまるで
<ヴィクトリア>のようなゴツイ船体。「あれ、話しではスクーナー
だったはず?」と疑問が湧くが早いか「これは<ゴッドスピード>と
いうレプリカ船で、(ヴァージニアで)博物館になる船だよ」と、ク
リスの声。何とここでは2隻の帆船が同時進行で建造中、お目当ての
船はさらに大型のため既存の建物内には収まりきらず、隣に増築して
広げたスペースで作業が進められていました。

SOB_3.jpg
右上:外壁に貼ってあるピクチャー。完成したらこんな感じになるのかなァ…
右下:事務所入り口。机の上には報道記事を抜粋したアルバム&サイン帳
左下:書類に目を通すブレイク船長



美しい流線型の船体に、大きく後方傾斜した3本のレイクマストを持
つこの船は、全長34.1m、幅7.0m、深さ2.9m、マスト高(メイン)
27.4mの3本マスト・スクーナー。19世紀初頭にバミューダ島で最も
多く建造され、活躍した帆船をモデルに造られています。艤装におい
ては、現在「バミューダ・リグ(米国ではマルコ−ニ・リグ)」と称
される元となった、17世紀後半に主に沿岸航海型のスループで用いら
れたものを、この遠洋航海型の船に取り入れているところが特徴。

船内の進行状況は、燃料タンクの類いの据え付けは終わっているもの
の、床となる板もなく足の置き場にも困るといったところ。まだ、船
室間のバルクヘッド(隔壁)が出来上がっている程度でした。それで
も訓練生が寝起・食事をとる空間には、両舷にボンク(造り付けの
ベッド)がカタチになりつつあり、頭の中でイメージは膨らみます。
さらに、となりのエンジンルームやナビゲーションルームは同時に数
名が入って学習できるよう、船の大きさの割に広くスペースを取って
設計されているなど、あらゆるニーズに対応。

SOB_2.jpg
左上・下:甲板にはチーク材が貼られはじめ、デッキらしくなってきた
右上:船首からの全景。木造船だが、色が白いのは外皮のエポキシ層
右下:ナビゲーション・ルームを上からのぞく。右奥はギャレー



また、船体外板は樹脂、ファイバーグラス、そして木材(ベイマツ)
のラミネート加工が施された7層構造から成り、耐久性・コストパ
フォーマンス・強度・メンテナンスのし易さといった点では復元船と
言えどもまさに現代の船です。ただし、外見上はほぼ歴史に忠実。
甲板上にはデッキハウスなどの視界を遮る大きな構造物はなく、船尾
のヘルムから船首までスッキリしていてかなり解放感がありました。

SOB_1.jpg
左上:設計図。デザインはニューポートのランガン・デザイン・アソシエイツが担当
左下:ハッチ開口部
右上:モックテストで使われたナビゲーション・コンソールの模型
右下:フォアマストの開口部から船底をのぞく。2つの丸穴はバウスラスター用



ひとつひとつ、着実に形になりつつあるこのデッキの上に立って、全
体を見渡しながら完成後の姿や、数カ月後に迫った進水式に思いを巡
らせていると、何だか胸がどきどきしてきます。と同時に、構想から
8年、紆余曲折もあったことでしょう、どれほどたくさんの人たちの
熱意と努力があってここまで来れたのだろうか、なんてことを考えな
がら、当事者でもないのにしばし感慨にふけってしまいました。

その日が待たれる進水時には、造船所前の水深が浅いため数百メート
ル離れたランチング・ポイントまで、トラック2台で搬送だとか。
曲がりくねった細い坂道に、30M近い長さの船体を考えると、クリス
いわく“これは見もの”です。

完成は来年4月とのこと。その暁には、バミューダの14歳から20歳
の子供達を乗せて、この島の教育事情に特化したセイルトレーニング
・プログラムが組まれることになっています。船は完成後すぐにバ
ミューダまで処女航海し、現地の人々に引き渡される予定です。

Weathercock.JPG
おまけ
- 道中、風見鶏ならぬ ”風見帆船” を発見
… it's huge!



この船の詳細に関しては、バミューダ・スループ・ファウンデーショ
ンのホームページhttp://www.bermudasloop.orgを御覧下さい。
また、建造過程の写真等は、ロックポート・マリーンのホームページ
http://www.rockportmarine.comでも詳しくチェックすることが出来
ます。

posted by SaltyFriends通信 at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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